桔梗と龍


□護り人
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「ぐすん、ぐすん」

「…いつまでもメソメソ泣くな」

「だって…」

最後に涙を見せたくなくて、涙を堪えていたけどみんなの姿が見えなくなると途端に涙が溢れてきてしまって。

「ほら、顔を出せ」

「いっ、痛い!」

以蔵が手拭いを取り出すと、私の顔をガシガシと乱暴に拭う。

「少しはまともな顔になったな」

ニヤリと笑いなが言った以蔵の言葉にムッとした私は

「目が痛い〜!以蔵が乱暴に拭くから目が手拭いに当たって擦れた〜!」

と両手で目を押さえながら嘘を言うと、「おい、大丈夫か!?すまん!」と押さえていた私の両手を掴んで左右に開き、以蔵が私の目を覗き込む。

その距離があまりにも近くて、見つめあうような形で私達はその場で固まってしまった。

「あ、えっ…と、うん。だ、大丈夫だよ」

「そ、そうか」

パっと離れるとなんだか気恥ずかしい空気が流れる。

「…行くぞ」

以蔵が歩き出して急いで私も着いて行こうとしたその瞬間。

ブチって音と共に私は体制を崩して転んでしまう。

「いったぁぁぁい!」

「今度は何だ…」

以蔵は呆れながら転んだ私の足元を見て、草履を脱がす。

「鼻緒が切れたか」

「鼻緒が…?」

転んだ時に打った肘を撫でながら言うと、以蔵は背に括り付けていた荷物を体の前で括りなおすとその場にしゃがみ、

「乗れ」

と一言言った。

「歩けるから大丈夫だよ!」

私が顔の前で両手をブンブン振ると、

「気づいてやれなくてすまない。足、痛いんだろう?」

見ると足袋に血がうっすら滲んでいて。

(傷が開いちゃったか)

と溜息をつく。
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