群青の空に舞う蝶

閑話其ノ十一
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小鳥のさえずりが耳に入りうっすらと目を開くとまだ部屋の中は薄暗かった。

二度寝しよう…と布団に潜り直して私は硬直してしまう。


同じ布団の中には晋作さんが眠っていて、よく見れば私は全裸だ。

「――――っ!!」

悲鳴をあげそうになったけど、昨夜の事を思い出して何とか悲鳴を飲み込むと急にドキドキと心臓が鼓動を早め始めた。

(そ、そうだ。私、晋作さんと…)

その時の様子を思い出しては顔から火が出るんじゃないかってくらい熱くなってしまって。

わずかに感じる下腹部の鈍痛に自分の身体の変化を感じればまた胸が高鳴る。



そっと晋作さんを見ると、その無防備であどけない寝顔に笑みが浮かぶ。

(あ…睫毛、結構長いんだ)

初めて間近で見る寝顔に何だか嬉しくなってマジマジと見つめてしまう。

好きな人と思いを通わせ、肌を重ねる事がこんなに幸せな気分にさせるのかと思っていれば


「幸せだな…」


ついその思いが言葉になってしまった。


「俺も幸せだ」


寝てると思っていた晋作さんが少し寝ぼけ眼で私を微笑みながら見つめてきた。

「しっ、晋作さん!!起きてたんですか?」

「ああ、少し前からな」

晋作さんは私を引き寄せるとギュッと抱き締めてくれた。

触れ合う素肌が恥ずかしかったけど、それ以上に気持ちよくて…。

身体を委ねていると「しかし、なんだな」と晋作さんが言葉を発した。

「寝顔を見られると言うのは何て言うか…照れるもんだな…」

その言葉に驚いた私は思わず身体を起こして晋作さんを見ると、わずかに赤く染まった頬が照れていることを証明していた。

その様子にクスクス笑うと、晋作さんは子どものように口を尖らせた後ニヤリと笑みを浮かべる。

「朝から俺を挑発してるのか?」

「え?…あっ!!」

思わず体勢を起こしたせいで私の上半身が露になっている事に気が付き、慌てて布団に潜ろうとしたら腕を引かれてあっという間に晋作さんが覆い被さってきた。

「前から思っていたが…」

「な、なんですか」

晋作さんが耳に口を寄せて

「お前、見た目によらず結構豊満だよな」

そういうと晋作さんは私の胸に手を添えてきた。

「なっ、ななななな!?」


「しかも初めてのわりに大胆だし、」

その添えた手が胸の先端をとらえると優しく弾く。

「―――ぁっ」

「感度もいい」

晋作さんは私の首筋に唇を這わせ、胸を弄りながらもう片方の手で腰をなぞる。

「…し、しんさく…さん。だ、ダメで…す」

溺れそうになる快感に必死に抗うと、晋作さんは笑みを浮かべてから私に口づけをした。

「昨夜は無理させすぎたからな。身体は大丈夫か?」

「うん。ちょっと違和感はあるけど…」

「そうか。今日はここでこのままゆっくりしていろ」

「ううん。大丈夫」

私の返事に反論しかけた晋作さんの唇に人差し指をあて、

「辛かったら休むから。ね?」

と言うと「まったく、お前は」と晋作さんが困ったようなはにかんだ笑顔を見せた。

「あ!!」

あることを思い出した私は晋作さんの腕をすり抜け、布団の脇にあった浴衣を羽織ると少しだけ障子戸を開いて庭を見る。

昨夜、月光を浴びて眩い輝きを放っていた月下美人は元気のない姿になっていた。

「月下美人か?」

後ろから晋作さんが私を抱き締めるように抱えると、呟くように言った。

「はい。本当に一夜限りなんですね…」

昨夜の花姿を思い浮かべながら言い知れない寂しさが込み上げ、晋作さんの腕を掴む。

「ああ。そうだな。だがあの美しい花姿は胸に焼き付いてるだろう?」

「…はい」

「それでいいんだ」

晋作さんはそう言ったっきり、私を抱えたままジッとしおれゆく月下美人を見つめていた。

その眼差しがとても寂しげで儚くて…

身体を捻って晋作さんの首根に腕を絡めると、ギュッと抱き着いた。

「…千夏?」

少しだけ戸惑った声で私を呼ぶ晋作さんをさらにきつく抱き締めると、晋作さんも私を抱き締め返してくれた。


僅かに身体を離して見つめあうと、唇が重ねられて…


優しい口づけから深くなる口づけを受け止めながら、私は今のこの幸せを失いたくないと強く思ったー――。












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