群青の空に舞う蝶
□群集の空に舞う蝶
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私達が長州に行ってからは怒涛の毎日だった。
長州の"高杉晋作"はその存在だけでも味方を鼓舞して抜群の軍事力を発揮し、後に第二次長州征伐と呼ばれる戦いは勝利をおさめた。
もちろん勝ったのには龍馬さん達が成し遂げた薩長同盟のおかげもあると桂さんは言ってたっけ。
戦いのさなか晋作さんは何度も血を吐いた。
高熱を出しても「今、高杉晋作が病で倒れ伏せっているなどと知られたら士気が落ちる」と言って立ってるのもしんどい筈なのに、味方の士気をあげるために海上戦の船上で着流し姿で笑いながら扇子を扇ぐ姿はまるで浮世絵のようだった。
そんな晋作さんは眠る時私を側に置きたがった。
体の不調を訴えられる人というのもあったんだろうけど、私の膝枕で寝たり、私を抱え込むよう寝たり、私が晋作さんを包んで腕の中で甘えるように寝付く日もあって。
京都にいた頃のように毎日一緒にいられるわけじゃなかったから、いられる時は私も甘えたけどそれ以上に晋作さんが甘えてきた。
そんな晋作さんが愛しくて無防備な寝顔の晋作さんにこっそり口付けたりしたっけ。
「ついてきてよかった」
膝の上で寝息を立てる愛しい人の髪をそっと撫でながら私は呟いた。
「療養しろ、だと?」
朝から体調が悪かった晋作さんは寝泊まりに使用している屋敷に訪れた桂さんを睨み上げていた。
「ああ。最近咳もひどくなってきてるし顔色も良くない。もう後のことは任せて体を休めろ」
「だが、「まだまだ晋作にはやってもらわなくちゃいけない事がある。体を休めるのも役目の一つだよ」
反論しかけた晋作さんの言葉に間髪入れず言い返す桂さん。
睨み合う二人だったけど、折れたのは晋作さんだった。