群青の空に舞う蝶
□閑話其ノ四
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龍馬との帰り道俺はうんざりしていた。
「はぁ…」
これで何度めだろう、こいつの溜め息は。
「おい、龍馬」
「なんじゃ?」
「鬱陶しいからその溜め息どうにかしろ」
「そうは言ってものう……はぁ…」
困った顔で溜め息をついたり
笑った顔で溜め息をついたり
全くなんなんだ。
「今日の千夏さんはまた一段と可憐じゃった」
「そうか?」
「せぇらぁ服も可愛いが、着物姿はまたこう…」
そこまで言って言葉を切った龍馬を横目で見るとニヤけた顔で頬まで赤らめている。
「以蔵もそう思わんか?」
「思わん」
即答で答えると龍馬はニヤリと笑い
「まぁ…好敵手は少ない方がええからの」
と俺の顔を覗きこむ。
「ふん。あんなちんちくりんのどこがいいのか俺にはわからんな」
「ほう?」
含み笑いで俺を見る龍馬に「なんだ」と言うと
「そんな事を言っていいがか?おんし本当は今日千夏さんにお礼を言いたかったんじゃないのか」
言われて俺の体がカッと熱くなる。
「ワシを迎えにきたなんて嘘までつきおって。素直じゃないのう」
「違う!俺は本当に「それにしても」
龍馬が俺の言葉を遮る。
「知り合って間もない男のために良く知らない土地を駆け出そうとするなんてなかなか出来る事じゃないきに。まっこと大した娘さんじゃ」
「…………ふん」
龍馬と並んで歩いていた速度を早めると「お、待ちとうせ」と龍馬が後ろから言った。
また今度あいつに会うことがあったらちゃんと礼を言おう。
そして着物もよく似合っている、と。
→女の意地