群青の空に舞う蝶
□子猫と私
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千夏が逗留するようになり半月あまり。
聞いたことの無い言葉を使い、読み書きが出来ると言うから文字を書かせてみれば見たことのない文字を書き、読ませてみれば「難しくて読めない」と首を傾げる。
そんな千夏は俺の興味心をいつもくすぐり、愛らしいしぐさや表情は確実に俺を虜にしていく。
どんどん千夏に引き込まれる自分に戸惑いすら感じてしまうくらいで。
今でもこうして千夏を目で探してしまう。
すると木の下で爪先立ちをして両手を上に伸ばしている千夏の姿を捉えた。
「またあいつは何を…」
そう呟くも俺の頬は緩んでいて。
「おい、何をしている」
と言うと千夏は満面の笑顔で振り向く。
その笑顔がまた俺の心を拐っていくようで…。
笑みを浮かべると縁側から庭に降りて千夏の元へ歩みをすすめた。
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「どうしたんだ」
高杉さんが隣にくると私は
「あそこ、見てください」
と指差す。
「…猫か」
高杉さんが上を向きながら言うと
「はい…。子猫ですよね。もうずっとあそこにいるんです」
きっと木から降りられないんです、と言うと高杉さんは私を見て
「だからお前は木の下で両手を上げていたのか?」
と目を瞬かせて言う。
「だってバランスを崩して落ちちゃったら大変じゃないですか」
「ばらんす?」
首を傾げながら高杉さんが尋ねてきた。
また英語を使っちゃった。
気を付けてるんだけど、英語を使わずに話すのがこんなに難しいなんて思わなかったなぁ。