群青の空に舞う蝶
□閑話其ノ二
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「聞いたっスか」
「ああ」
「ここにも姉さんに惚れた人がいたっスね…」
千夏の部屋を訪ねようとしていた慎太郎と武市は、晋作と千夏の会話を耳にして溜め息をつく。
「まぁ…予測は出来た事だ。それより龍馬の様子はどうなんだ?」
「それが…姉さんに会った日からどこか上の空で…」
慎太郎の言葉に武市は眉間に深くシワをよせる。
「……病気が始まったか」
「しかも今回は重症な感じっス。姉さんの逗留先が長州藩邸に決まった時も落ち込んで大変だったっスよ…」
「そうなのか?」
「はい…。姉さんを見つけたのはワシなのにって拗ねてなだめるのが大変だったっス」
「まぁ、圧倒的に龍馬には不利だな」
「仕事に影響が出なければいいっスけど…」
「…………無理だろう」
「そうっスね…。そう言えば以蔵君無事だったみたいっスね」
「そうだな。だが…」
「何スか?」
「千夏さんのタラシぶりは天然かもしれないな」
「?」
「あぁ、いや。こっちの話だ」
武市は開かれた障子から部屋の中を伺い、見つめあうような格好の晋作と千夏を見ては深い溜め息をはいた。
→子猫と私