心騒ぐ小説
□雨雲 合流編
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雨雲 合流編
大石と菊丸の話から更に三十分経過。
二人は寄り道をしたので学校からの距離は先ほどとあまり変わりはない。寄り道中は止んだ雨も、復活していた。
菊丸SIDEで話は進む。
「さっき、不二の当ては外れてないって言ってたけど、どういうこと?」
「ん?あぁあれ。そのままの意味」
分からないから訊いてるのにっと口調を強めたら、「不二は不二」と言われた。
「手塚のことは俺よりも知ってるはずだよ?」
「…手塚が傘なしになるって分かってたってコト?」
確認すると「そう」と肯定された。
「不二、濡れたかったのかな?」
「それも無きにしも非ずだけどあの不二≠セよ?」
不二は不二・あの不二……。
詳しい理由なんて分からないけど、一個解った。
「ケイカクテキハンコウ≠チてやつ?」
「多分ね」
「う〜ん。確かに」
手塚は、思いだけで貸しちゃいそうだけど、不二は……。
「理由が分からないから何とも言えないかも…だけど、手塚みたいに無意識でのことなら可愛いのっにっっ!」
「可愛くなくてごめんね〜」
「ふっ不二っっ!」
ははは、と笑っていたところに後ろから誰かに抱きつかれたっと思ったら、それは不二で……。
『こっ…怖い』
一瞬ぶつかり合った不二の瞳…。
ぞわって……ぞわわ〜ってした。
「理由も分からないのに可愛くないとか言われた〜ショックだよ〜」
不二は俺に抱きついたままで顔を覗き込もうとしてきた…。
ちょっ大石、助けてよー。
「不二、濡れるぞ」
助けを求めたのは大石だけど、実際(多分)助けてくれたのは、不二を動かせる唯一の人。
「でもさー可愛くないなんて言われたら、やっぱ仕返し…でしょう?」
「良いから入れ」
言葉少なく手塚は俺の背中に張り付いていた小鬼をはがしてくれた。
助かった〜。
『……あれ…?』
「手塚、気づいたんだな」
「あぁ、助かったよ、大石」
俺から引き剥がされた不二が落ち着いた場所は、俺の隣に並んだ手塚の持つ傘の中…。
そう、……傘…って!
「にゃんで傘もってんの!」
二人とも持ってない…って事から色々発展して不二に仕返しされそうになったって言うのにっ。
「大石が部室に置いといてくれたんだよ。でもさ、貸してくれるんだったら普通に貸してくれれば良いのに、よりにもよって手塚にたぬき言葉≠フ暗号使った手紙渡すんだもん」
俺の隣に位置を定めた不二が俺を通り越して大石に「今時、古すぎだよ〜」と笑う。
それに対して大石は「見つからなかったら意味ないし」と返す。
「よくゆーよ。手塚に渡した時点でもう絶望的だってことに気づかなかったの?」
「不二、それはないんじゃ…」
いくらなんでも、それくらい手塚にだって…。
「手塚が帰りがけに、僕に手紙見せてなんて言ったと思う?普通〜に、」
『不二、コレを大石にもらったんだが…なんだと思う?意味ありげに渡されたんだが…』
「…だよ?」
不二が呆れたように話す。
…まじ…?いや、いきなり渡されたらそりゃ意味解んないかもしれないけど…。
「不二……」
あっ。ちょっと手塚が可哀相。
「不二に渡るって思ってたからさ」
おーいし。それってはじめっから手塚には見切りをつけていた…って感じ?
う〜ん、不憫だ。
そういえば、大石急に手塚のこと話題に持ち出して楽しそうにしてたのって…この事だったんだ…。
「また降ってきちゃったから助かったけど。せっかく拭いてもらったのにまた振り出しに戻るところだった」
不二が指先で自分の髪をいじっている。
…拭いてもらった…って不二、雨に濡れたのかな?そういえば制服がびしょ濡れだ。
俺や大石より濡れてるって…いったいどれだけ雨に打たれてたんだろう?