愛話
□いっぱいキスをしようっ
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【亀梨の部屋にて 時はクリスマス前】
* 1 *
亀梨出演の音楽番組を見終わり、亀梨と赤西はそれぞれ思い思いに時間を過ごしていた。
つけっぱなしだったテレビから、深夜特有のお笑いのネタに適したような番組が放送されだした頃。ソファに寝転がりながら雑誌を読んでいた赤西が口を開いた。
「なー。カメ」
読んでいた雑誌を手近に置いて、赤西はむくっと起き上がる。
「ん〜?」
対して、赤西が寝転がっていたソファを背にしてドラマの台本読みに集中していた亀梨は、赤西の問いかけに生返事。
「俺思ったんだけど…」
ソファに座りなおして話を続ける赤西だが、亀梨は意識が戻ってきておらず「うん……」と雰囲気だけで返事をする。
もちろん、そんな亀梨の態度に赤西が突っかからない訳がなく。
赤西は後ろからそっと手を伸ばして、亀梨の意識を独り占め(?)している台本を取り上げると同時に、不満を爆発させる。
「カメッ!!」
「っわ!」
台本が急に手を離れ、そして視界から消えた為に亀梨は強引に現実へと引き戻された。
「びっくりした…。何?赤西。どーした?」
「どーしたじゃないっ。無視すんなっ」
今、赤西の存在を思い出したかのような亀梨の反応に、赤西はむっとむくれて亀梨の髪の毛をきゅっと掴んで手前に引っ張った。
「いててててっ。首!髪より首が痛い。痛いって、赤西っ」
「痛くなるようにしてるんだっつーの!」
グイッと亀梨に顔を近づけて赤西は怒る。
「てか、赤西だって雑誌に夢中になってたじゃん。俺、さっきちょっと声かけたよ?」
無反応だったけど、と亀梨は笑う。
「そんなん知らね」
「声かけたって」
「だから知らない」
本当は赤西には思い当たる節があった。本当に雑誌の記事の内容に入り込んでいる瞬間があったことは確かだったから。
「かけた。俺の方がマシじゃん。返事はしたんだから」
それでも、認めるのは分が悪いからあくまでもしらを切る。読んでいた記事が記事だったから。認めない。
…つもりだったのだが。
「それは……」
亀梨の追求に早くも赤西はギブアップ寸前、追い込まれてしまった。
「それは?」
「だから…」
「…だから?」
「……いや、だから…さ」
「うん…?何?」
強気な態度から一転して狼狽している赤西を見て、亀梨は笑いを堪え切れずに声を震わせながら再三問い返すもんだから赤西の顔はむくれる。
「笑うなよ」
「赤西が勝手に挙動不審になってるからだろ」
むすっと不機嫌になる赤西に「それはそうと。…そろそろ手、離して」と亀梨。
首がずっと反り返った状態で話していた亀梨だが、ここら辺が限界…と訴えたのだが。赤西は「やだ」の一点張りで開放する気はさらさらない様子。
「やだって……。このまんまじゃ、キス…してあげられないよ?」
「嫌だっ」
「だから…」
嫌ばかりじゃ判らない、と亀梨は優しく笑う。