「…貴方は、嘘吐きですね。」
呟いた言葉…。
この言葉は、貴女を壊す為のもの…。
「泣いても、いいんですよ。」
そう言って私は、貴女の頬に触れた…。
この仕種は、貴女を狂わせる為のもの…。
「…いや、違うな。
…そう、笑わなくてもいいんです。」
吐息を、瞼の上に堕とし…、
指で、唇を辿って…、
瞳を開いた貴女に、微笑…。
この笑みは、貴女を潤す為のもの…。
「…許されたっていいじゃないですか。」
両の腕を、
そっと静かに細き背に廻す…。
この温もりは、貴女を癒す為のもの…。
私は、貴女を癒したい…。
…「私」は、
貴女の為に産まれた…。
貴女が、
「私」の存在理由…。
…貴女を包んで、
貴女を護る。
「私」は、
そのために、
産まれたんだ…。
た:「胎児」<終>
2008/5/1
【た:(ただ、包まれて…。そして、産まれて…。) (た)】
“『…貴方は、嘘吐きですね。』”
貴方はそう呟いた…。
その言葉が、私を壊した…。
“『泣いても、いいんですよ。』”
そう言って貴方は私の頬に触れた…。
その仕種が、私を狂わせた…。
“『…いや、違うな。
…そう、笑わなくてもいいんです。』”
吐息が、瞼の上に堕ちて…、
指が、唇の上を辿って…、
瞳を開けば、目の前に、貴方の微笑があった…。
その笑みが、私を潤した…。
“『…許されたっていいじゃないですか。』”
貴方の両の腕が、
そっと静かに背に廻されて…、
その温もりが、私を癒した…。
私は、貴方に癒された…。
…「私」は、
貴方に創られた…。
貴方が、
「私」を創り出した…。
…貴方に包まれて、
…貴方に迎えられて、
「私」は、
もう一度、
本当に、
産まれたんだ…。
た:(ただ、包まれて…。そして、産まれて…。)<終>
2008/5/1
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