「姜伯約的五十音」

8件

【あ:「“哀”…、貴女を表す言葉」 (あ)】




その姿は、“哀婉”…。
その声は、“哀音”…。
紡がれるのは、“哀歌”…。

貴女を表す言葉は、
そのどれもが、
あまりにも、哀しい…。

私は願う。
…哀願する。

貴女のその哀しみが
いつの日か癒える事を…。

…出来ることなら、
許されるのなら、
私が、
貴女を癒し、
満たしたいと……。



…今、心から、哀願する…。





あ:「“哀”…、貴女を表す言葉」
<終>
2007/12/26
孤蝶

【あ:(“逢”…、貴方を汚したもの) (あ)】




その姿は、“精美”…。
その声は、“凛音”…。
紡がれるのは、“氾愛”…。

貴方を表す言葉は、
そのどれもが、
あまりにも、美しく…。

私は恐れる。
…恐怖している。

貴方のその美しさを
いつの日か全て私が奪い去る…。
そんな、現実に…。

…出来ない。
許されはしない。
私が、
貴方に癒されるなど…。
許されてはならない……。



…玲瓏な瞳、汚し己を、
今、心から、嫌悪する……。





あ:(“逢”…、貴方を汚したもの)
<終>
2008/5/3
孤蝶

【い:「癒す者」 (い)】




“「…出来ることなら、
許されるのなら、
私が、
貴女を癒し、満たしたい…。」”


…そう告げた私に、
貴女は、静かに、微笑んだ。

やはり、哀しげなその表情。
…胸が、痛む。


“「…そんな顔をしないで…。」”


…貴女こそ、
そんな顔をしないで下さい…。

…そんな、顔、させたくないんです…。


“「…私は、癒されている…」”


…哀しい微笑で、
……哀しい声音で、
貴女は、言葉を紡ぐ…。


“「…もう、充分なの…」”
“「…これ以上は、駄目なの…」”
“「…私は、許されてはいけないの…」”


…きつく、
きつく、
抱き締めた腕の中、
貴女は哀しき音を、紡ぎ続ける…。


“「それでもっ…」”
“「…それでも私は、
貴女を癒し、満たす者でありたい…。」”


哀音を遮り、伝えた心…。

…小さく、小さく、
震えた身体…。



…私の肩が、濡れた…。






2007/12/26

【い:(癒されるべきは、貴方…) (い)】




“「…出来ることなら、
許されるのなら、
私が、
貴女を癒し、満たしたい…。」”


…そう告げる貴方に、
私は、静かに、微笑しかなく。

哀しく濁る、その宝玉の瞳…。
…胸が、痛む。


“「…そんな顔をしないで…。」”


…貴方は、…貴方が、
そんな顔をする必要なんてない…。

…そんな顔、させたくないの…。


“「…私は、癒されている…」”


…哀しい瞳、
……哀しい声音、
貴方には必要ない…。させたくないのに…。

貴方を哀しませるだけの、私…。


“「…もう、充分なの…」”
“「…これ以上は、駄目なの…」”
“「…私は、許されてはいけないの…」”


…きつく、
きつく、
抱き締められながら、
私はただ、心からの言葉を紡ぐ…。


“「それでもっ…」”
“「…それでも私は、
貴女を癒し、満たす者でありたい…。」”


遮られ、伝わってくる、心…。

…小さく、小さく、
震えた身体…。



…忘れたはずの“何か”で、
私の頬と、貴方の肩が、濡れた…。





2008/5/3

【う:「奪ったもの」 (う)】




数え切れない程の絆を…、
数え切れない程の愛を…、

数え切れない程の涙を…、
数え切れない程の笑みを…、

数え切れない程の哀しみを…、
数え切れない程の憎しみを…、

数え切れない程の安らぎを…、
数え切れない程の優しさを…、


数え切れない程の命を。


奪って、奪って、奪い続けてきた…。

許されない…。許されるはずがない…。
いや、許されてはいけない…。

私は、…私達は、それでも生きる…。
だからこそ、生き続ける…。

戦って、戦って、戦い続ける…。
  
奪われぬために…。
奪ったもの、その全てを背負って…。

生き続ける…。





う:「奪ったもの」
<終>
2007/12/26

【う:(奪わせたもの) (う)】




数え切れない程の絆。
数え切れない程の愛。

数え切れない程の涙。
数え切れない程の笑み。

数え切れない程の哀しみ。
数え切れない程の憎しみ。

数え切れない程の安らぎ。
数え切れない程の優しさ。


数え切れない程の命。


奪わせて、奪わせて、奪わせ続けてきた。

“共に在りたい”という、
ただ、その思いのためだけに。

許されない。許されるはずがない。
いや、許されてはいけない。

だから、私は生きる。
罪を背負い、思いを背負い、生き続ける。

戦って、戦って、戦い続ける。
  
奪われぬために。
奪わせたものとして。

生き続ける。





う:(奪わせたもの)
<終>
2008/5/3

【た:「胎児」 (た)】




「…貴方は、嘘吐きですね。」


呟いた言葉…。
この言葉は、貴女を壊す為のもの…。


「泣いても、いいんですよ。」


そう言って私は、貴女の頬に触れた…。
この仕種は、貴女を狂わせる為のもの…。


「…いや、違うな。
…そう、笑わなくてもいいんです。」


吐息を、瞼の上に堕とし…、
指で、唇を辿って…、
瞳を開いた貴女に、微笑…。
この笑みは、貴女を潤す為のもの…。


「…許されたっていいじゃないですか。」


両の腕を、
そっと静かに細き背に廻す…。
この温もりは、貴女を癒す為のもの…。

私は、貴女を癒したい…。


…「私」は、
貴女の為に産まれた…。


貴女が、
「私」の存在理由…。


…貴女を包んで、
貴女を護る。

「私」は、
そのために、
産まれたんだ…。




た:「胎児」
<終>
2008/5/1

【た:(ただ、包まれて…。そして、産まれて…。) (た)】




“『…貴方は、嘘吐きですね。』”


貴方はそう呟いた…。
その言葉が、私を壊した…。


“『泣いても、いいんですよ。』”


そう言って貴方は私の頬に触れた…。
その仕種が、私を狂わせた…。


“『…いや、違うな。
…そう、笑わなくてもいいんです。』”


吐息が、瞼の上に堕ちて…、
指が、唇の上を辿って…、
瞳を開けば、目の前に、貴方の微笑があった…。
その笑みが、私を潤した…。


“『…許されたっていいじゃないですか。』”


貴方の両の腕が、
そっと静かに背に廻されて…、
その温もりが、私を癒した…。

私は、貴方に癒された…。


…「私」は、
貴方に創られた…。


貴方が、
「私」を創り出した…。


…貴方に包まれて、
…貴方に迎えられて、

「私」は、
もう一度、
本当に、
産まれたんだ…。




た:(ただ、包まれて…。そして、産まれて…。)
<終>
2008/5/1



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