流星クラウン
□紡ぐ周回軌道
8ページ/26ページ
よし、残るは食品ということで。
現在13時です。
流石の私も少しお腹が空いた。
3日食べてないお腹に朝のお茶漬けをいれたら余計に空腹が増してしまった。
正直空腹には耐えられるけど、彼らがあの量の朝食で足りたかは怪しいところなのだ。
「はい、お腹空いた人!」
「はいでござる!」
「……」
車に荷を積んだところで彼らに振り返れば、真田が勢いよく、そして意外にも毛利が控え目に手をあげていた。
…体型からしてそんなに食べないのかと思っていた。
どっちにしろ昼食にしようか。
「じゃあ昼食にしよう。…あ、今じゃ三食になってるから、できたら慣れてね」
「おお! 食事が三回…!」
「太っちゃやだからね、旦那」
猿飛がお母さんに見えてきた…
さて、どうしようかな。
フードコートじゃ目立って仕方ないしなぁ…
無難にファミレスとかにしておこうかな。
「六名様ですね、こちらへどうぞ」
あ、ラッキー。
あんまり目立たない席だ。
通路際から私、猿飛、真田。
向かいに毛利、大谷、石田が座る。
注文しやすいようにと私は通路際だ。
まぁ妥当な席順だよな。
「この中から好きなの選んでいいよ。名前見て解んないなら写真、こういう絵になってるやつ言ってくれたらいいし」
「甘味もあるぞ、佐助!」
「食べる気なの、旦那…」
「いいよ、好きなの頼めば」
「我はこれがよい」
「はいはい」
結局、猿飛はツナとチーズのサンドイッチ、石田はパンシチュー(無理矢理選ばせた)、真田はデミグラスソースのオムライスと、苺とチョコのパフェ、毛利は目玉焼きハンバーグと、抹茶アイスと白玉団子の洋風あんみつ、大谷は私と同じマカロニグラタン。
ファミレスには和食がないの忘れてた。
…大丈夫かなぁ。
「お待たせしました」
やってきた料理に目を輝かせる面々。
毛利に至っては目玉焼きに向かって、
「日輪よ…」
とか言ってた。
怖ぇよ。
「大衆向けにつくられてるから毒の心配はないけど…、必要なら言ってくれ」
一応言ったけど、周りが平気で食べてるのを見たからか今回は誰もなにも言わなかった。
問題は口に合うか、だな。
「…どう? 皆、食べれる?」
「おむらいす、うまいでござる!」
「日輪は食してもまた良し」
「不味くはない、かな」
「ぬしの朝餉には敵わぬが、悪くはなかろ」
「…熱い」
うん、なんとか食べられるみたい。
ってか大谷、さらっと恥ずかしいこと言わないでくれよ。
誉めても…デザートぐらいしか出ないからな。
そして石田は猫舌。
大谷に比べたら熱くないだろうに…
逆にグラタンをああも普通に口に入れる大谷はあれはあれでおかしい。
舌焼かないんだろうか。
「…舌が痛い、イタイ」
「って焼いてるし! ほら水飲んで、ちゃんと冷ましながら食べなよ…」
「大丈夫だ刑部、私も舌を焼いた」
「大丈夫じゃないから! あんたに至っては冷ましてたのに焼いたの!?」
もうやだ。
なんなのこの二人…
バカなの? ねぇバカなの?
隣の猿飛が同情の目で見てきた。
あ、今ちょっと猿飛と心の距離が近づいた気がする。
毛利はただ黙々と食べていた。
気に入ったのか少し上がった口角が可愛らしい。
…にしてもよく食べるなぁ。
このあと白玉団子も食べるつもりみたいだし。
「ほら旦那、そおすがついてる」
「む、かたじけない。…佐助もどうだ、うまいぞ!」
「や、俺様はいいから。…ぁ、ほらまたこぼしたぁ!」
…お母さん。
いや、ここはオカンか。
口うるさい感じ。
なんかさっきの同情の視線の意味がわかった気がした。
ふと顔をあげると、毛利がこちらを見ていた。
というより、私の手元を見ている。
食べたい、のかな?
毛利はちゃっかり自分の分は食べ終えてしまっていた。
あれ、私より大分多かったはずなのに…
「…食べてみる?」
恐る恐る聞いてみれば、一瞬目が輝いた。
「貴様が食えんと言うなら食うてやらんこともない」
「そうだね、私お腹いっぱいだから食べてくれる?」
「ふん、さっさと寄越せ」
「じゃあどうぞ」
少し残っていたグラタンを毛利にあげれば、やっぱり上から目線で取り上げられた。
でも毛利、口元がほころんでるぞ。
そうか、お前はツンデレか。
たぶん、いやきっとそうなんだ。
その後、散々食べたにも関わらず真田と毛利がデザートをぺろっと食べてしまったのは言うまでもない。
…小さい二人が一番食べているこの状況ってなんか異様だ。
この感じだと大人組より子ども組の方が食費かかるだろうなぁ…
そんなことをぼんやり考えていたら、遠い目をした猿飛に、今度は肩を叩かれた。
2012.1.22