流星クラウン

□紡ぐ周回軌道
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…うわぁ。
何この女の子たち。
目、黒いし、睫毛ばしばししてるし…
それになんだその爪は、人を殺すための武器なのか?
あと何の臭いかわかんないけど、きっつ…



「えーっと、」

「うわ、やっぱりイケメン! 声もカッコいいし!」

「後ろのお兄さんたちもイケてるじゃん」

「隣の男の子可愛くない?」



つい癖で旦那を後ろに庇ったけど、正解だったようだ。
幸い女の子たちは見上げてばかりで背の低い旦那には気づいていない。

毛利の旦那も石田の旦那の後ろに上手く隠れている。
つまり、俺の隣にいた彼女、紅雨ちゃんは男だと思われてるらしい。




「もしかして、僕、ナンパされてるのかな?」




紅雨ちゃんが口を開いた。
先程より幾分か低い声で、首を傾げる。
…どうやって切り抜けるつもりなんだか、というかなんぱってなんなの。

じっと見下ろす俺に気付いた彼女は顔をあげてこちらを見ると、口の動きだけで、

『私に合わせろ』

と言ってきた。
どうやらこうなることは予想していたようだ。

ここは従っておこうか。



「そぅかもぉー。ねぇ、今からお茶しない?」

「あー、ごめんねぇ。
悪いんだけど僕、女の子に興味ないんだ」





「えっと、紅雨ちゃん……?」

「えーっ!」

「ほんとぉ?」



待てよ、いや待って、
これ絶対俺様巻き込まれたやつだよね!?




「本当だよ?」



また首をかしげたかと思うと今度は俺の方を見る。



「ねぇ、僕変なこと言ったかな」



表情に乏しいところがどうにも本気っぽさを醸し出している。
やられたと苦い気持ちの俺に彼女は何か言えと目で訴えてくる。

俺様ったらつい。
…いや、これ俺悪くないよね?



「あんたは何にも間違ってないよ、安心しな。…ってことでじゃあね、おねーさん」

「……」




女の子たちは最早何も言えなくなったらしく、固まってしまったため、その間に俺たちは逃げるようにその場を離れた。



「……マジ?」

「ナマで初めて見たぁ…」

「後ろのお兄さんたちもそんな感じだったし…」

「でも、イケメンなら許せるかも」



後ろからそんな声が聞こえた気がしたけど、あえて聞かなかったことにした。
聞いたら負ける気がしたんだ…

まぁ後ろのお兄さん、こと石田の旦那と大谷の旦那は多分石田の旦那が大谷の旦那を気遣って荷物を取り上げたりしてたから、俺たちと相まってそう見えたんだと思う。

あの二人、本当に我が道行ってるよなぁ…



「猿飛さん、ありがとう、助かった」

「いや、俺様も助かったけどさぁ…」

「巻き込んで申し訳ない」

「いいよ、あの臭いの近くに長くいる方が嫌だったし」




まぁ別に嘘を言ったわけでもないんだし。
一瞬男色かと思って焦ったけどね。




「ふん、あのような者などもっと早くに片付けろ」

「…すみませんね」



ひどく眉根を寄せて毛利の旦那が言う。
毛利の旦那にとってもあの女の子たちはきつかったに違いない。

後ろで石田の旦那も溜め息を吐いて彼女に問いかける。



「この時代の女は皆ああなのか?」

「まぁ女も強くなったからね…。男より気が強いのなんてよくいるんだ」

「…貴様も大概だがな」

「違いないよ。さ、取り合えず荷物車に積もうか」



なんか調子狂うなぁ…
こういう女の子って俺初めてだよ。

要観察、かな?











2012.1.21
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