流星クラウン

□紡ぐ周回軌道
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「うわイケメン…」



思わず呟いた。
何処のモデルだばかやろう。

猿飛は微妙に服が大きいのがゆるく着こなしているように見えていい感じだ。
あ、石田はやっぱりジーンズの丈足りてない。
微妙な丈になってしまっているからロールアップにした方が良さそうだ。



「ねぇねぇ、これってどうするの?」

「はいはい」



二人が差し出したのはベルト。
私は石田のものを受け取って通してやる。
猿飛は見よう見まねでやってくれた。

顔を逸らした石田の耳が赤い気がしたのは、気のせいかな?



「やれ、これはどうすればよいのだ?」



考える間も無く大谷に呼ばれ、パーカーのファスナーをあげてやる。
毛利には小さめのカーディガンを着せていたので、ボタンをとめてやった。

…そういや石田はシャツちゃんと着てたよな。
ズボンもちゃんと履いてたし…
あ、そうだ。
石田のジーンズ。



「石田さん、そのジーンズ、あ、袴? 丈が中途半端だから裾あげするよ」

「私は構わん」

「私が構うんで。じっとしててよ」



なんだかんだで律儀に固まってくれる石田に笑いそうになりながらジーンズをロールアップにしてやった。

七分丈にするといくぶんましになったかな。
…モデルがこいつだと何着ても気にならないような気もするが。



「じゃあ、今から外に出るけど、簡単な注意だけさせてくれ。

まず、ここでは武器、刃物とか銃とかは持ってたら捕まる。
この日本には戦はないからね。

それより気を付けてほしいのは車。
外に沢山走ってるけど、ってか後で乗るやつなんだけどな、ぶつかったら危ないから。
下手したら死ぬ。

あとここの人間は基本的に平和ボケしてんだから殺気振り撒いたりしないでくれよ。

いいか?」

「ねーねー、苦無もだめ?」

「……見つかんなきゃいいよ」

「やった、ありがとっ」



笑った猿飛はほっとしたような色を滲ませていた。
使わないだろうからいいけどさ。

じゃ、行きますかね。



「悪いけど真田さんの履き物がないから、猿飛さんが抱いてて」

「はいはい」

「すまぬな、佐助」

「旦那が手がかかるのはいつものことだしね」



そうして玄関を出ると、ガレージの車に向かう。
黒いアルファードが私の車だ。

もとは父のものだが、今は私が譲り受けていた。
まさかこんなとこで大きな車が役に立つなんてな。

ドアを開けて見せると、皆して固まっていた。



「これが車だ。馬より速く走る鉄の塊だな」

「さわってはならぬのでは?」

「そりゃ動いてるこいつに轢かれれば死ぬけど」



素直すぎる真田に苦笑しつつ、皆をなかに押し込む。

助手席には毛利。
後ろには石田と大谷。
一番後ろに猿飛と真田が座っている。

シートベルトをさせて、私はエンジンをふかした。
…騒ぐな、って言っても仕方ないか。



「じゃあ行くよ」



そう言って私はアクセルを踏んだ。
さて、ショッピングセンターにいかなきゃな。
なるべくおっきなとこがいいか。



「猿飛さん、苦無出さなーい」

「あ、バレた?」

「危なくないから、そんな簡単に刃物出さないで」

「あれはなんでござるか!?」



騒がしいな。
そんなに聞かれても答えきれないんだけど…



「ただかつどのがいっぱいいるでござる!」

「うわぁ、って旦那、似てるけど違うから」



ただかつって何だ、それ人間か?
車のように走る人間…
いやあり得ない。

しかもそれを連想させるって…
あいつらの戦国時代はどうなってんだ。



「あそこが目的地だよ」

「……」



最早言葉を失ったのか皆して呆然とショッピングセンターを見上げていた。
五人がぽかんとしているのはそれはそれで可愛い光景だったりするのだが。



「さぁ、行こうか」



楽しいお買い物の始まりです。








2012.1.14
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