流星クラウン

□紡ぐ周回軌道
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「えぇと、まず、この時代にあるものに慣れて。…ここの家にあるもの、説明するから」



私はリビングに座る皆に向かって言った。
外に出る前にこちらに少しでも慣れてもらわなければ困るのだ。

何から説明しようか…
必要なやつ…
トイレか。



「じゃあまず、トイレ、えーと、厠? を説明するよ」



五人をぞろぞろ引き連れてトイレに向かう。
電気の仕組みと換気扇とを説明してからドアを開けて見せた。



「面妖な…」



使い方を説明して水を流すと皆に吃驚された。
だからって苦無構えないで、猿飛。



「ここじゃあ井戸とか川とか無くても水がひいてあるんだよ。さっき食器を洗ってた所も同じような仕組み」

「便利なモンだねぇ」



興味深そうに覗き込む猿飛。
さっきまでの警戒はどこへやら。

それからキッチンの説明したり(家電から鳴る音にいちいち皆驚いていてちょっと面白かった)、リビングの説明したり。

皆もともと要領がいいんだろう、すぐわかったと頷いてくれた。
テレビつけたときに皆して臨戦態勢になられたのには流石に焦ったけど。

現在9時少し前。
デパートに行くにもまだ一時間ぐらいある。



「じゃあ少し休憩してて。あと一時間したら外出るから」

「なんと! 外に出ても良いのでござるか?」

「買うもの色々あるし…」

「一時間ってどれくらい?」

「え? あー…、ちょっと待って、調べるから」



ケータイを引っ張り出して検索を始めると、大谷が覗き込んできた。
…あ、説明するの忘れてた。



「あ、これは携帯電話って言ってね、遠くの人と話をしたり、文字でやり取りしたり、情報を集めたりできる便利なからくりだ」

「ふむ、興味がわいた。後でわれにそれの使い方を教えやれ」

「ああ、さっきのお礼だ、構わないよ。…ええと、一時間は半刻、だな」



時間の読み方とか教えなきゃなぁ…
数字とか、文字も違うっけ。
…後でいいか。
とりあえずなんか着れそうな服を探してあげよう。



「質問は色々あると思うんだけど、揃えたいものとか結構あるから後にしてくれな?」

「では、帰ったら我に文字を教えよ。こちらの字は読みにくくて敵わぬ」

「わかった。…じゃあここでしばらく寛いでてくれ。私は準備してくるから」



毛利は新聞を指してそう言った。
…中学生くらいに見えるのに、まるで大人だ。
一番落ち着いてるかもしれない。

その点で言えば大谷もそうだが、彼は終始楽しそうだ。
何か良いことでもあったのだろうか。
 

まあいいや。
外に出れるような服を探そう。
…父さんの部屋に大人組のものならあるか。

石田はどれでも入りそうだな。
どちらも細身だけど石田よりは猿飛の方がしっかりしてる。
なんだろう、筋肉質な猿飛に比べると石田はちょっと心配になるくらいだ。

父さんも太ってたわけじゃないけど痩せてもなかったからなぁ…
あの二人にはだぼだぼだよな。
…しかもあれ絶対ズボンの丈足りない。
足長くて吃驚したわ。



「これと、これでしょ…」

「俺様これがいいな」

「おけおけ。……って猿飛さんっ!? いつの間に!」

「あはー、俺様これでも忍だよ?」

「…心臓に悪いわ」



飄々と笑う猿飛。
本気で吃驚した。

その猿飛が手にしていたのは七分丈の黒いズボンと灰色のパーカー。
…くそう、地味にセンスいい。

石田には濃紺のジーンズと白いシャツを選んだ。
まぁこれならいいだろう。

ただ小さい彼らの服がない。
大谷は私より少し大きいぐらいだから私の持ってる男物の服でいいとして…

真田と毛利をどうしたものか。
毛利は一番小さな服を着せて…
真田は流石にズボンはないから今のままで我慢してもらって、上はパーカーを羽織らせよう。
そんで靴がないから猿飛に抱いて貰おうかな。

…よし、これでいこう。



リビングに戻って皆に服を手渡した。
着方…
わかるかな?

とりあえず私も着替えよう。



スキニージーンズと黒いTシャツ、その上に茶色のチェック柄のシャツを羽織った。
黒縁の眼鏡をかけたら終わり。
この格好なら化粧は必要ないだろう。
あんな面子と出掛けるのに女子の格好で睨まれるなんて御免だ。

さて、着替えれたかな?
おっと、帽子忘れるとこだった。
既に目立つ面子を引き連れていくとはいえ自分の白髪もまぁ目立つし。
なるべく少年に見えるくらいが丁度いいだろう。



よし、あのイケメンどもを見に行くかな。










2012.1.12
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