流星クラウン
□紡ぐ周回軌道
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「あ、動く階段とか勝手に開く襖的なものあるけど騒がないでくれよな」
「…え、それもう既に衝撃なんですけど」
「じゃあ皆ちゃんとついてきてくれよ」
「俺様無視!?」
猿飛と愉快な会話を繰り広げつつ、私は自動ドアをくぐった。
五人が驚きに固まったのは言うまでもない。
まずは靴から買おうと思う。
サイズの微妙に合っていない靴を履かせて歩き回るのは些か酷な気がしてならないから。
季節の変わり目だからかセールの字があちらこちらに出ていて、少し得した気になった。
「よし、じゃあまず履き物調達するから好きなの選んでくれ」
男物の靴屋で好きなものを選ばせることにした。
スニーカーとかが無難だろう。
でも石田は細身の革靴が似合いそうだ。
猿飛にはごつめの編み上げブーツとか。
スニーカーの機能性に感心していた二人の手にあった靴のサイズを確認すると、私は勝手に二人の分を買うことにした。
ついでに大谷の分も買おう。
あんまり負担にならないやつが良さそうだ。
さっき着替えさせたとき左足に包帯を巻いてるのが見えたから。
「このすにぃかぁ、ってやつは凄いね! 俺様超忍べそう!」
「ここで忍ばなくていいからな」
「私もこれならあの車より速く走れる気がする」
「いやいやいや! それ人間じゃねぇよ」
普通に考えてありえないよ、それ。
「ヒヒッ、三成ならばそうムズカシイことではなかろ」
「ええー…」
車より速い人間とか…
現代科学形無し…
「おい貴様、さっさと我のものを選ばぬか」
おっと忘れてた。
放置されていた毛利が目をつり上げている。せっかちなやつめ。
とはいえ早く買ってやらないと猿飛が真田を降ろせない。さっと選んでしまおう。
真田には赤いスニーカー、毛利には靴紐が緑のものを選んだ。
これで真田を歩かせることができる。
「よし、次は服だ。ここでの着物だよ」
ここでも好きに選ばせることにした。
猿飛、石田、大谷をそうさせている間に私は真田と毛利をつれて小さめの服の方へ向かった。
何を着せてやろうか。
二人とも可愛いからなぁ。
真田は赤系統の、毛利は緑系統の服を買いたがるので、うるさくならない程度に一緒に選んだ。
「じゃあ戻ろう。遅いと猿飛さんに怒られる」
「ふん、猿など放っておけばいいものを」
だって、怒られるのは私だ。
これ以上警戒されては堪らない。
「お帰り。これでいいの?」
「またセンスいいし…」
「何だ?」
戻ると、三人が服の入ったかごを私に見せてきた。
迷彩を取り入れた猿飛、藤色や黒でシンプルな石田、大谷は臙脂や白を中心に選んでいた。
「店員、とやらが見立ててくれたのよ」
「なるほどね…」
見回すと、どや顔で店員がこちらを見ていた。こちらに向かってサムズアップしているその表情は達成感に満ちていた。
まぁこんないいモデルがいたらやる気になるよなぁ…
店員さんに軽く会釈をして会計に向かう。
こんなに出費するのはいつぶりだろうか…
幸い無欲な私は稼ぎをたくさん貯めていたから大きな問題はないのだが。
服類はこれで全部かな…
「……あ」
「どうした」
「下着買うの忘れた」
呟けば、石田が問いかけてきた。
下着って言ってわかんないのかな?
「簡単に言うと、褌?」
「なっ、貴様!! 女子がそのようなっ!」
「石田さん初なんだねぇ。でも私のことは女だなんて思わなくていいからさ」
「そういうわけには…」
「じゃあ、あっちに売ってるから選んできてよ。私は他に見なきゃいけないものあるからさ」
石田の言葉を遮るようにして私はその場を去った。
プレゼントくらい、してもいいよね?
2012.1.15