01/07の日記

22:52
紫の空、橙の雲 2
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十年後。自分はそんな先までボスでいるらしい。
そして、彼も。




カコンッ、とどこかで鹿威しが鳴る。
地下なのにそんな物まであるのか。驚きだ。

純日本風の内装が続くここは、十年後の自分が造らせたという地下アジトとー不可侵条約を結びながらもー繋がっている、風紀財団の地下の拠点。その居住スペースらしい。
初めてトレーニングルームで純粋な殺気を纏った彼と戦い、ボロボロになった僕を抱き上げて彼は何故かここに連れてきた。抱き上げられた体勢が体勢だったから気恥ずかしさで顔が赤くなったけれども、ここまでの間彼は終始無言で、決して軽くはないダメージを受けた僕は何も言えず口を閉じていた。

規則正しく歩いていた彼がある襖の前で止まり、音もなく開けた和室に入ってやっと降ろされた。

「哲」

「へい」

彼が短く呼ぶと同時に、一度閉めた襖を開いてフランスパン軍団筆頭、草壁哲矢が入ってきた。
さっきまでは廊下には誰もいなかった気がする。……まさか、隣の部屋で待機していたのだろうか。
その草壁は持っていた救急箱を置くとすぐに退出した。

彼は懐を探って何かを取り出していた。

「上、脱いで」

「え、」

「……もういい」

何を言われたのか理解できないで固まっていると、彼はおもむろに僕の服を掴んで無理やり脱がせた。
そしてそのまま、敷いてあった布団にうつぶせで寝転ばされる。

「な、に」

「……じっとして」

意外に近くに聞こえた低いテノールにびくりと体が揺れる。

言われた通り大人しくしていれば、背中に何かが刺さる感覚がする。でも痛くはない。
何ヶ所か刺されてしばらくすると一つ一つ丁寧に抜かれ、後は救急箱から包帯などを取り出して普通に手当てを受けた。

手当てを受けている間に彼を観察してみた。
中学時代よりさらに伸びた背。顔立ちは相変わらずで、少し目が鋭くなった。がっしりしていなくて割と細身の体は、無駄な脂肪や筋肉がついていないのだろう。髪も伸びていて、うっとおしいのか首元で一つにくくって背中に垂らしている。

パタンと救急箱を閉めたかれは立ち上がり部屋を出かけて、顔だけ振り返った。

「今日はこちらでいるといい。アルコバレーノには言っておく」

「………え?」

「着替えは後で持ってこさせる。それまでは待っていろ」

それって、泊まっていけってこと!?何で!?
混乱する僕を置き去りに彼ーー沢田綱吉は部屋を出て行った。



紫の空、橙の雲の設定。
十年後、初めてバトった後の話。

以前アンケートを取ったトップ3の内これだけ2がなかったな、と思いふと思いついた場面をその場にあったルーズリーフ(無地)に殴り書き。

多分、綱吉はボンゴレの試練とかをクリアした後にバトってやり過ぎたな、とか思ったんじゃないですかね。
で、満身創痍な雲雀さんを見て、お詫びに手当てしようと。内心ではボンゴレの試練をクリアして良くやったねとか労っているといいなとか思ってみる。(←
手当てする前に綱吉が雲雀さんにしていたのは針治療。専用の細い針で体のツボに刺すと血行を良くしたりストレスを軽減したりするそうです。(←あまり詳しくは知らない)
自然治癒力が高まるツボに刺して、雲雀さんの体に傷が残らないように配慮していたりという設定。何故綱吉が針治療できるのかは秘密。

とりあえず、十年後も気まぐれな綱吉と、あわあわする雲雀さんを書きたかっただけなのです。

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