†理王の願い†

□お菓子禁止令
4ページ/5ページ


 しかしどうして良いのか分からないようで、とりあえず持っていたチョコレートを返してきた。
「あ…どうも」
 チョコレートを受け取った綱吉もまた戸惑う。先程、必死だった自分は何か言ってしまった気がするのだが、雲雀はそれを聞いていたのだろうか。聞いていたのなら、要するに自分からのチョコレートは受け取っては貰えないということなのか。
 それを訊くこともできず、受け取ったままの状態で固まる綱吉。そんな綱吉に、雲雀は握っていたメモを見せる。
「これ、君の友達が書いたんだよね」
「ふぇ?」
 綱吉は顔を上げてメモを見た。それは確かに京子の字だ。手は打ったと言っていたが、これだったのかと綱吉は納得する。

 でも、良いことってなんだろう?

 雲雀がチョコレートに興味があるとは思えない。
「これを見たときは半信半疑だったけど、良いこと、ありそうだね」
「あり…そう…ですか?」
 あったではなくありそうということは、まだないのだろう。
「うん、君がそれを渡してくれれば、あったになるよ」
「え?それって…」
 雲雀は綱吉の手元、チョコレートを見ていた。
 渡してよいのだと、受け取って貰えるのだと、綱吉はようやく理解する。
「あの…」
 おずおずとチョコレートを差し出す。手が震え、体温が急上昇してゆくのが分かる。心臓はこれでもかというくらいに大きな音を起てていた。
 しかしもう、後戻りはできない。

「す、好きです!受け取ってください!!」

 何度も何度も心の中で練習した言葉を、初めて声に出した。思った以上に上擦ってしまったことに泣きたくなる。しかも、雲雀はなかなか受け取ってくれない。もしかして貰ってくれると思ったのは、自分の勘違いだったのかと綱吉は不安になった。
 そこに、雲雀の腕が伸びてくる。
「ひゃ、ひゃう!?」
 そしてそのまま、抱き寄せられてしまう。

「うん、確かに受け取ったよ」

 チョコレートだけじゃ物足りないとでも言うように、雲雀は綱吉の体も心も全部、その腕の中に収めたのだった。

end
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ