短編

□あべこべの日
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バイトが終わり、夜碓氷のマンションに来ていた美咲は重そうに口を開く。


「碓氷…話があるんだが…」

「なぁに?美咲ちゃん」



美咲は俯き小さな声で云った。



「こないだ深谷に襲われた…」

「嘘でしょ…?鮎沢」



碓氷は明らかに怒っているって感じだ。

そらそうだろ…やっとの思いで手に入れた彼女を他の男に犯されたら…。


「嘘だぞ!引っかかったな!」


美咲はどうやら碓氷の事を騙せて嬉しそういつもの笑顔になる。


「鮎沢…冗談が過ぎるよ」

「碓氷!今日は何の日か分かるか!?」


美咲に云われ碓氷は携帯を開き今日の日付を見る。

日付を見て碓氷は笑った。


「フッ…4月1日…エイプリルフィールか…そういえばそんなのあったね」

「やっと碓氷を騙す事が出来た…ぞ…?」


碓氷の顔を見ると怒っているというより冷たい表情に変わっていた。


「鮎沢…」

「なっ、なんだ碓氷…」


声まで冷たくなり嫌な予感が美咲を襲った。



「俺たち別れよう…」

「えっ…」


あんなに大切にしてくれたのに…嘘をついただけで愛想を付かされてしまうなんて。


「ウソだよ☆美咲ちゃん!これでおあいこだよ…って鮎沢?」


碓氷の隣で美咲は声をなるべく出さないように泣いていた。


「ひっく…ひっく…なんなんだよ!アホ碓氷!」

「泣いているの?ゴメンね」


碓氷は美咲の頭をそっと撫でる。


「お前は時々嘘か本当かの見分けが出来ないんだよ!」

「大丈夫だよ…俺から別れを切り出すなんて絶対に無いから安心して」

「本当か…?」


美咲は泣いたせいで潤んだ瞳で碓氷を見た。


「本当だよ!じゃあ仲直りしよっか…ねっ!」


コクンと美咲は小さく頷いた。


「何したい?美咲ちゃん…」

「べ、別に好きにすればいいだろ!」

「本当にいいの?俺の好きなようにして」

「勝手にしろ!アホ碓氷!」

「分かった…じゃあ今日のおしおきはあべこべの日にしよっか」


美咲は意味がイマイチ分からなかった。


「あべこべって…?」

「云っていることと逆の事…」

「それぐらい知ってるぞ!」

「じゃあ、鮎沢好きの反対は?」

「嫌い……?」

「よく出来ました」


碓氷は美咲の頭を優しく撫でる。


「そういう意味か…まぁ、エイプリルフィ−ルだしな…流石ヘンタイ宇宙人!ちなみに今日は泊まらないぞ!」

「そっかじゃあ立てなくしたら帰れるよね! ニヤッ」


美咲はもの凄くイヤな予感がした。


「じ、じゃあ私はコレで…「今日は帰ろっか美咲ちゃん!」

「うっっ…母さんにも帰るって云ってあるし…」

「美咲ちゃん・・・もう、あべこべ関係なくなってるよ…」

「碓氷・・・紛らわしいからやめないか?」

「そうだね、鮎沢にはやっぱり好きって言ってもらいたいな!いつも、嫌いばっかだもん!」

「絶対に言うもんか!」

「素直になってよ鮎沢」
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