雪どけの花

□放課後
1ページ/4ページ



目を覚ますと、風に小さく揺れている白いカーテンが目に入った。

辺りは静かすぎるくらいだ。


僕はゆっくりと体を起こす。


ベッドの上……どうやら医務室らしい。


あぁ、そう言えば授業中に気分が悪くなって、倒れたんだっけ。

上履きを履くと、校医の先生を捜した。

──が、姿は見当たらない。

黙って教室に戻ってもいいものかと考え、僕は壁に掛かった小さなホワイトボードに一言『帰ります。2−1狭間』とメッセージを残す。

気分の悪さも眩暈(めまい)も、もうなかった。

腕時計に目をやると、17時になろうとしている。

放課後か……いくらなんでも寝過ぎだよな。

苦笑するとカバンを取りに行く為、僕は医務室を出て教室に向かった。






「お、狭間。具合はもういいのか?」

教室のドアを開けると、カバンを2つ持った高村が人懐っこい笑顔を浮かべて声を掛けてくる。

「あぁ、すっかり良くなったよ。もしかして、お前に迷惑かけた?」

「気にすんなよ……でも、お前担いで医務室まではちょっとしんどかったけどな」

言って、笑う。

「悪かったな……サンキュ」

「いいって。それより、担任と現文の鈴木が心配してたぞ」

「そっか。じゃあ、職員室に顔だけでも見せてくるよ」

「そうしてやれ……1人で大丈夫か?途中までで良かったら、一緒に帰るけど」

言いながら、高村は心配そうな表情を浮かべて僕を見た。


「気持ちだけありがたく受け取っておくよ。午後の授業分のプリント、貰って帰ろうと思ってるから遅くなるかもしれないし」


「わかった。じゃ、また明日な」

「うん、今日は本当にありがとうな」


僕は小さく笑うと、手を振って別れた──。



次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ