雪どけの花
□放課後
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目を覚ますと、風に小さく揺れている白いカーテンが目に入った。
辺りは静かすぎるくらいだ。
僕はゆっくりと体を起こす。
ベッドの上……どうやら医務室らしい。
あぁ、そう言えば授業中に気分が悪くなって、倒れたんだっけ。
上履きを履くと、校医の先生を捜した。
──が、姿は見当たらない。
黙って教室に戻ってもいいものかと考え、僕は壁に掛かった小さなホワイトボードに一言『帰ります。2−1狭間』とメッセージを残す。
気分の悪さも眩暈(めまい)も、もうなかった。
腕時計に目をやると、17時になろうとしている。
放課後か……いくらなんでも寝過ぎだよな。
苦笑するとカバンを取りに行く為、僕は医務室を出て教室に向かった。
☆
「お、狭間。具合はもういいのか?」
教室のドアを開けると、カバンを2つ持った高村が人懐っこい笑顔を浮かべて声を掛けてくる。
「あぁ、すっかり良くなったよ。もしかして、お前に迷惑かけた?」
「気にすんなよ……でも、お前担いで医務室まではちょっとしんどかったけどな」
言って、笑う。
「悪かったな……サンキュ」
「いいって。それより、担任と現文の鈴木が心配してたぞ」
「そっか。じゃあ、職員室に顔だけでも見せてくるよ」
「そうしてやれ……1人で大丈夫か?途中までで良かったら、一緒に帰るけど」
言いながら、高村は心配そうな表情を浮かべて僕を見た。
「気持ちだけありがたく受け取っておくよ。午後の授業分のプリント、貰って帰ろうと思ってるから遅くなるかもしれないし」
「わかった。じゃ、また明日な」
「うん、今日は本当にありがとうな」
僕は小さく笑うと、手を振って別れた──。