書斎
□奇跡の雫1
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あたしはお気に入りの赤い頭巾をかぶり、バスケットを持って家を出た。
お母さんにおばぁちゃんのお見舞いに行ってきてと頼まれ、久々におばぁちゃんの家に行くことになったのだ。
お母さんに気をつけて行ってらっしゃいと見送られてから、数時間。
今、困った状況に陥っている。
こんなことになったのは全部あの声のせい。
そう、あの声が聴こえて来たのは、おばぁちゃんの家に行く途中の森の小道だった。
「そこのお嬢さん。どこにいこうとしているの?」
「今からおばぁちゃんのお見舞いにいくのよ」
「それなら良いことを教えてあげよう。
この先にお花畑があるから摘んでいってあげなさい。きっとおばぁちゃんも喜ぶよ」
「そうね。ありがとう。
ところで親切なあなたは一体だぁれ?」
「秘密。きっと摘んでいってあげるんだよ」
それは正体も明かさず、そう言ってどこかに行ってしまった。
言われた通りにお花を摘んで戻ろうとしたけれど右も左も分からなくなって、適当に歩いていたら本格的に道に迷った。
ここが何処なのか見当もつかないし標識も見当たらなければ人の気配もしない。
あるのはひたすらに緑、緑、緑、緑・・・・。
空を見上げたら青だけど、灰色になりつつある。
雲が嫌な感じに空を侵し始めだした。本当に困った状況だ。