勿忘草

□他の誰でもない、自分のため
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手を伸ばしたのは、どちらからだったろう。
先に手を伸ばしたのは政宗の方で、俺はそれを一度拒絶して、そしてもう一度伸ばされた手を掴んだ。
掴んではいけないと、確かに知っていたはずなのに。
触れた瞬間に、まるで体に電流が流れたかのようにどこか体の奥深くがしびれた。

その手を、二度と離せないだろうと思った。

「・・・ねぇ、政宗。」
「Ah?」
「・・・ここにいてくれる?」

一瞬きょとりと目を瞬いて、政宗は柔らかく笑う。
その大きな手が、ゆっくりとあやすように俺の頬を撫でた。
あぁ・・・こんなにも心地良い。

「・・・いてやるよ。」

お前のために。
そんな言葉に、「うそつき」と呟いて、彼の肩に顔を埋める。

うそつきなのは俺の方。
だって、俺が彼に会いに行くのは決して「彼が俺に惚れたから」ではなくて。

俺が、彼に惚れたからなんだから。




手を伸ばしたのは、どちらからだったろう。
先に手を伸ばしたのは俺の方で、一度は佐助にすげなく拒絶されて、もう一度、これも拒まれたらどうしようと思いながら手を伸ばした。
伸ばしてはいけないと、確かに知っていたはずなのに。
触れた瞬間に、まるで今この瞬間に心臓が止まってしまうのではないかというような鼓動が響いた。

その手を、二度と離せないだろうと思った。

「・・・ねぇ、政宗。」
「Ah?」
「・・・ここにいてくれる?」

心もとない口調で言う佐助に思わず口の端を緩めて、俺はこいつの白い頬に触れた。
柔らかくて、少しだけ傷跡がある頬に触れる。そんな行為に飽きる気がしない。
あぁ・・・こんなにも愛しい。

「・・・いてやるよ。」

お前のために。
そう嘯けば、佐助は「うそつき」と呟いて俺にすがってくる。

あぁ、確かに俺はうそつきだ。
だって俺は佐助のためにここにいるのではない。
俺がここにいるのは、俺がそれを望んだから。

俺が、こいつを愛しいと思ったからなんだから。




<FIN>

title by:ふりそそぐことば

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