もうひとつの室町物語

□馬の使い道
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きり丸がバイトの一環で忍術学園で飼育されている馬の世話をすることになった。
木下先生に馬が飼育されている小屋に案内され、餌の時間や散歩の時間等を教えた。
「馬の世話の仕方については知っているな?」
「はい、前に授業で加藤村に行って馬の世話の仕方に付いて勉強しましたから」
「そうか、分からないことがあったらすぐに言うんだぞ」
「はーい」
木下先生が去るときり丸は早速馬の体を綺麗に洗ったりと手際よく世話を始めた。
「あれ?山本先生の隣にいる黒い馬・・・学園にいたっけ?」
山本先生の美しい白い馬の隣にいる美しい黒い馬。
きり丸は黒い馬を見たことはなかった。
黒い馬をしげしげと眺めていると、八左ヱ門が小屋の中に入ってきた。
「どうしたきり丸?」
「竹谷先輩、この馬新入りの馬ですか?」
「ああっ、この馬は新平の愛馬だよ」
黒い馬の名前は『小夜』で新平の愛馬だと説明した。
「新平がよく遠出の任務や外出のときに利用するんだ、普段は学園の裏庭で飼うけど寒さが厳しくなる頃にはこの小屋に入れて冬を過ごすんだ」
「へぇー、尼崎先輩の馬か」
きり丸は小夜をじっと眺めた。
山本先生の白馬と並ぶほどの美しい顔立ちに引き締まってはいるがほっそりとした体型。
長距離移動だけでなく重荷を運ぶのにも便利そうだ。
「この馬、尼崎先輩以外の人間でも言うことを聞きますか?」
「ああっ、小夜は素直な馬だからな、新平だけでなく俺達の言うこともちゃんと聞いてくれるぞ」
「へぇー」
きり丸は小夜を見上げていたが小夜はきり丸が気に入ったらしく擦り寄ってきた。
「ははっ、人懐っこいなー」
「きり丸、小夜達に塩をあげてくれないかな」
「いいですよ」
こうしてきり丸と馬の生活が始まった。
放課後になると馬小屋の掃除をしたり餌をあげたり散歩に連れて行ったりした。
「それにしても小夜は本当に立派な馬だなー」
小夜をじっと見つめるきり丸はあることを思いついた。
バイトが終わると団蔵の所に行き、小夜がどれぐらいの荷物を持って走れるのか確かめてと頼んだ。
団蔵は快く承知し、米俵を2つ小夜の背中に乗せ、走らせた。
「米俵2つ分は軽いな、小夜ちゃんは長距離専用の馬だから米俵6つは軽くいけるかも」
「じゃあ試しにやってみてよ」
「いいけど・・・」
米俵をもう4つ小夜の背中に乗せて走らせるとスピードは衰えを見せなかった。
「尼崎先輩の馬、相当鍛えられているね、加藤村の馬借の馬ですら米俵は4つが限度なのに」
団蔵は馬借に欲しい馬だと目を輝かせながら小夜を見上げていた。
その時、新平が姿を見せた。
「お前ら、小夜に何をしているんだ?」
「尼崎先輩」
団蔵は小夜をどれほど動けるのか試していたのだと説明した。
「小夜は長距離移動専用の馬だからな、重い荷物も簡単に持ち運びが出来るのは当たり前だ」
長距離移動となれば必要な荷物も持っていかなければならない。
だから小夜は普通の馬と違って倍近くはある荷物を持ち運ぶことが出来るのだ。
「へぇー・・・いいこと聞いちゃった♪」
きり丸はニヤニヤしながら新平に本格的に小夜の面倒を見させてくれないかと頼んだ。
「尼崎先輩、暫くは遠いところに行かないんでしょう?だったら小夜ちゃんの面倒を僕に見させてください!」
「それは助かるな、実というと明日から数週間、実習で学園を空けるんだ」
四年生は明日から数週間、実習でいなくなるため小夜の面倒を快く引き受けた。
「ありがとうございます!」
きり丸に小夜の面倒を任せた新平は翌日、四年生と共に実習に出て行った。
放課後になるときり丸は小夜を連れて早速町に出た。
「きりちゃん、この荷物を隣の隣町に運んでおくれ」
「毎度!」
前日に頼んだ重荷配達バイトを引き受け、小夜に重荷を背負わせ、きり丸も乗った。
「小夜ちゃん、頑張ってね」
小夜はヒヒンと頷き、歩き始めた。
隣の隣町まで無事に荷物を運び終え、戻るといつもの倍はある給料が手に入った。
「さすが大掛かりな仕事は給料が多いなぁ〜」
きり丸は大量の小銭を数え、懐にしまうと明日の重荷配達バイトを引き受けた。
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