もうひとつの室町物語

□小優の成長記録
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小優が生まれてから暫くは新平は休みの度にちょくちょく帰って来ていたが数ヵ月後にはあまり帰って来れなくなった。
『帝王の仕事や教師の仕事が多忙すぎて今回も帰れない、有給が取れるようになったら帰るようにするから暫く待ってくれ』
「しょうがないよね」
二つのわらじを履いての忍者の仕事は誰もが両立は難しいことは知っていたため雛はきつく言えなかった。
「これじゃ小優の成長が見られないじゃないの」
子供の成長は早いため外で働いている父親は大抵成長を見逃してしまう。
見逃しては勿体無いため雛はあることを閃いた。
7枚の紙と筆を用意し、小優の成長記録を日記として書くのだ。
1ヶ月の成長記録を書いて学園に送り、それを新平の見せるのだ。
「尼崎君、奥さんから手紙だよ」
「雛から?なんだ?」
小松田から手紙を受け取った新平は分厚い封筒を開けると小優の成長記録がきっちりと書かれていた。
丁寧に絵もつけて・・・

『○月×日、今日小優が初めて寝返りを打った。初めて寝返りを打つタイミングを見られたし手足も大きく動くようにもなったよ。』

『○月×日、最近小優の夜泣きは少しずつなくなって来ている。母乳を飲む量も多くなっているし首もしっかりとして来ている。』

『○月×日、今日、お義母さんがきて小優に新しい服を貰った。女の子向けでとっても可愛い奴。小優にとっても似合っていたよ』

『○月×日、小優の表情がだいぶ分かるようになった。私があやすと笑い、この場から離れるとべそをかくようになった。このときの赤ちゃんの表情って可愛くて憎めないのよね』

手紙と絵を見て新平は嬉しそうに笑みを浮かべた。
「小優も成長して行っているんだな」
直接小優の成長は見られないが成長記録と絵だけでも充分小優の成長が分かった。
「さっさと仕事を終わらせるか」
雛と小優に会いたくなったため新平は溜まっている仕事を片付けるが片付けても次の仕事が大量に来たため一向に帰れずにいた。
また1ヶ月が経った頃、雛の手紙が来た。

『×月○日、小優が這い這い出来るようになった。最初は後ろに下がるばかりだったけど練習を重ねるうちに前に進むようになった。』

『×月○日、小優の這い這いが少しずつ速くなっている。最近では私が名前を呼ぶと自分が呼ばれているのが分かるのかすぐに私のところに来るようになった』

『×月○日、母乳が出てこなくなった。数週間前から離乳食を与えているけど慣れない食事なのかあまり食べてくれない・・・どうしたらいいのかな?』

「食堂のおばちゃんに頼んで離乳食のレシピを送ってやるか」
手紙を折りたたむと食堂に行き、おばちゃんに離乳食のレシピを教えてもらった。
「乳離れをした赤ん坊には薄味から慣らさせたほうがいいのよ、1カ月おきに少しずつ味を濃くさせていけば3歳になったときに味覚を養うようになるから」
「サンキュ」
アドバイスをメモし、レシピを手紙と一緒に雛に送った。
半月後に雛からの手紙が来た。
今回は小優の成長記録は入っていなかったが食堂のおばちゃんのお礼の手紙だった。
『食堂のおばちゃんのレシピとアドバイスのおかげで小優は離乳食をよく食べるようになったわ。今では離乳食の好き嫌いはないわ。おばちゃんにありがとうと伝えてね。』
新平は手紙を持って食堂に行き、おばちゃんに手紙を渡した。
おばちゃんもよかったわねと呟き、微笑んだ。

雛が新平に月に一回、小優の成長記録を渡し続けてからそろそろ半年が経とうとした。
明日は小優の満1歳の誕生日だ。
「たっく・・・仕事が多すぎるってーの!」
教師の仕事も多かったが帝王の仕事の方が教師の仕事よりも3倍多かった。
「新平」
「何だよ!竹谷先輩」
仕事が終わらないでいるため新平は不機嫌な声を出して八左ヱ門を睨み付けた。
「明日小優ちゃんの誕生日じゃなかったのか?生まれてから初めての誕生日を迎えるんだし・・・」
娘の初めての誕生日。
新平は大きくため息を付いて頭を抱えた。
「そうだった・・・明日小優の誕生日だった・・・」
「娘の誕生日ぐらいちゃんと帰って祝ってあげるのは父親として当然じゃないのか?」
少しきつめの口調で新平を説教すると新平はそうだなと頷き、教師の仕事を八左ヱ門に任せて家に帰ることにした。
「後は俺に任せてお前は4〜5日程父親や夫らしいことをしろ」
「サンキュ、先輩」
八左ヱ門に礼を言うと私服に着替え、外出と有給届けを提出してから家に帰って行った。

家に着くと雛は小優を抱えて笑顔で出迎えた。
「お帰り、新平」
「ただいま、すまなかったなろくに帰れずに」
「いいのよ、ちゃんと毎月手紙の返事を出してくれているじゃない」
手紙の返事を欠かさずに出せばそれでいいと頷いた。
小優も父親に会えたのが嬉しいのか手を伸ばして声を出していた。
「あっ、あっ」
「はいはい、お父さんに抱っこしてもらいたいのね」
小優を新平に渡すと新平はそれを受け取って小優を抱っこした。
「おっ、大きくなったなー」
最後に抱っこしたのは小優が生後数ヵ月後だ。
明日で1歳を迎える小優の体はしっかりとして来ており、赤ん坊特有の柔らかさは少しずつ失われていた。
「立って歩くことはまだか?」
「昨日捕まり立ちが出来るようになったわ、歩き始めるのはまだ掛かりそうよ」
「そうか」
この日は小優に付きっ切りで楽しいひと時を過ごし、誕生日当日は少し贅沢をして外食をした。
初めての誕生日を迎えた小優を寝かせつけると離れた部屋で性行為に溺れた。
「ほぼ1年ぶりね・・・」
「すまなかったな性行為もろくに出来ず、でも任務以外ではお前以外の女とはヤっていねぇから」
「当たり前でしょう、浮気したらくノ一の本当の恐ろしさを徹底的に体感させてあげるんだから」
このまま5回ほど中に性欲を吐き出し、ひとつの布団で眠りに付いた。

有給が終わるまでは雛と小優と共に楽しく過ごし、学園に戻った新平はいい気分転換が出来たのか帝王の仕事と教師の仕事を以前よりも捗った。



製作日 2013年9月19日
完成日 2013年9月20日
更新日 2013年9月20日
 

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