忍たま小説集・番外編

□運命の恋歌
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数十年前・・・

満開の桜と温かい風が吹き乱れ誰もが見惚れるほど美しい景色だった。
「綺麗・・・」
「ええっ、そうですね」
町の流行の着物を身に纏い、艶がある綺麗な黒髪をなびかせて黒味の掛かった青い瞳の美少女が女友達の言葉を聞いて微笑んだ。
「私、この間酒屋の御曹司に告白されちゃったのよ」
「それで、どうしたんですか?」
「勿論断ったわよ、私はお金持ちでイケメンの人と結婚するって決めているから」
「あははは・・・確かに大きな夢を持つのはいいけどその夢を欲望に変えるのはよくないことですよ」
苦笑いしながら忠告を出す女性・・・牡丹は凛とした女性だ。
身分の低い家柄で生まれたが美しい顔立ちをしておりしとやかで心優しい性格を持ち、人を年齢に関係なく優しく接していくため友達も多く、町の若い男達は彼女に夢中だった。
「牡丹、あんたの方が凄く綺麗でもてるんだからさっさと結婚したら?」
「私は私自身を愛してくれる人を探しています、周りの人は私の外見ばかり見ているだけで本気で愛してはいない・・・本気で私のことを愛してくれる人じゃないとダメなんです」
牡丹は過去に恋をしたことがあった。
しかし、相手は牡丹の外見だけを見ており牡丹が貧乏人だと知ると『こんな女と一緒に共にしてじゃ贅沢は望めないな、金持ちだと思って付き合ってみりゃあ、ただの外見だけの女だったとは、がっかりしたぜ!』とひどい暴言を吐き、ゴミのように捨てたのだ。
幸い、操は奪われなかったが牡丹は失恋に心の傷を負ってしまい、二度と安易に恋はしないと決めたのだ。
「大丈夫だよ、牡丹には絶対にいい男が見つかるさ、きっとどこかのお城の若殿様と結ばれるかもよ」
「やめて下さいよ、私なんかじゃ殿様と釣り合いませんよ」
2人は笑いながら家路に付いた。

アワビ城では、新しい殿となった真一が見合い写真を見ていた。
父が殿になったから次は結婚しろと言われたのだった。
「どの女も皆外見ばかりだ」
見合い写真を隅のほうに放ると軽くため息をついた。
真一は殿になる前に色んな女性と付き合った。
しかし、皆金目的ばかりでデートをするたびに高いアクセサリーや化粧品や着物ばかりねだっており、真一が『もう金は出さん』と言うと、女達は膨れっ面で去って行った。
真一は『中身』が綺麗な女性を望んでいたのだ。
欲を持たずに寛大で優しい・・・そんな女性を。
「現実は、そう上手く行くはずがないか・・・」
「真一、どうだ、いい人見つかったか?」
父親が尋ねると真一は首を振った。
「すみませんが私は自分で相応しい人を見つけます」
「そうか・・・だったらお前の好きなようにするがいい」
訳とあっさりと許した父だった・・・
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