I.T.L

□第8戦【迫る恐怖、危機】
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――捜索開始から小一時間。

砂漠から帰って来たスレッド。すぐさまフォックスが砂漠に居たかどうか確かめた。
いい知らせは、無かった……。


「こんな早朝なのにかなり暑かったよ…。ずっとあんな砂漠に居れば死んじまうぞ」言いながら、スレッドは私が手渡したハンカチで汗を拭う。
本当に酷い汗だった。それだけ砂漠が徐々に熱を持ち始めているのだろう。


「フォックス…、一体どこへ行ったのでしょうか……」


不安で手を震わせていると、スレッドが安心させるかのように私の手を握って来た。
そしてニカッ、と少年のような笑顔で微笑みかけ、私はその笑顔で少しだけ安心出来た。まるで「必ず見つかるさ」とでも言っているように見えたから。


「とりあえず、水分補給したらまた砂漠を探しに行ってくるよ」

「私も共に行きますっ」

「セレン達は宿に戻ってて。実は砂漠の地図は一つしか無いんだ。もしはぐれたりしたら大変なことになる。
こんな時間に店は開かないだろうし……、第一、王女様にそんな場所に行かせる訳にはいかないだろ…?」


本当は、"王女だから"という理由で何か言うこと自体、私はそれはあんまりだと思っていた。
何に対しても"王女だから"と、自分が望むことをさせてくれなかったりということが昔から多々あった。

しかし今この現状では、私はスレッドに対して頷くしかなかった。きっとスレッドは、私を気遣って言ってくれている。
砂漠の地図が無いのは確かだ。もし万が一迷いでもしたら、フォックスと合わせて私まで捜索対象となる。

そんな迷惑、スレッドやリアにはかけたくなかった。



スレッドは先程言った通り、水分補給をした後すぐさま砂漠にフォックスの捜索へ。


取り残された私達。
あれだけ街を探して居なかったとなればフォックスはきっと砂漠のどこかに居る。

探しに行きたいのは山々だが、スレッドに宿に戻れと言われた以上、戻るしか他なかった。

その時、


――トサッ!


突然、リアが地面に跪いた。驚いて、私はリアに寄り添い「どうしたんですかリア!?」と、リアの肩を揺らした。


「…聴こえる……」

「え…?」


リアは小さな声で呟いた。言葉の意味が分からなかった。
何が聴こえるのか。辺りは静まり返り、風の音しか私には聴こえない。


「声が、聴こえる……。あっち……。あっちに、お兄ちゃんが……」


リアは"あっち"という場所を私に教えるべく、指を差した。それは正しく、スレッドが先程フォックスの捜索に向かったトルド砂漠だった。

まるで、何かに取り憑かれているようだった。
美しい緑色の瞳は焦点が合っていなく、右手の指は砂漠を差しているが、瞳はどこに向いているのか分からない。


「リア…?何を言っているのです…?」


そんなリアを心配してもう一度肩を揺らせば、突然リアは立ち上がり、砂漠の方へと走り出した。


「リ、リアッ!?」


突然のことに驚きたじろいだが、慌ててリアの後を追いかけた。
年齢的に私の方が速い筈、だが何故か全く追いつくどころか距離さえ縮まらない。

やがて砂漠に入り、さらにその奥に入っていく。私は必死でリアを追いかけた。
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