I.T.L
□第3戦【弱キ者ノ心】
3ページ/12ページ
「ねぇねぇ、お姉ちゃんはなんて名前?」
早速仲間となったセレンディアと交友的になろうと、リアはセレンディアに自己紹介を求めた。
「セレンディア・キュルス・バルロイトです。よろしくね」
「わぁ、長い名前ぇ…。私はリア・キュヴァリオだよ。リアって呼んでね!」
セレンディアにも太陽のような笑顔で挨拶をするリア。セレンディアはその笑顔を見た瞬間、顔を赤らめていた。
「(可愛いぃーっ)わ、わかりましたわ、リア」
セレンディアは、満面の笑顔で笑うリアの頭を撫でてやっていた。セレンディアもリアと知り合えて嬉しそうだ。
「……そういえば…」
リアと向き合っていたセレンディアはこちらを向き、何か思い出した様子で問うてきた。
「貴方のお名前もまだ聞いておりませんでしたわね。なんと仰るのですか?」
「フォックス・ヴァルセリアだ。フォックスでいい」
「…ヴァル、セリア……?」
俺のファミリー・ネームを聞いた瞬間、驚いた表情をして手を口に当てるセレンディア。
まさか、まさかとは思うが俺が幼い頃にセレンディアと会っていたんだろうか?正に今のセレンディアの驚きようはそんな雰囲気だ。
いや、まさか…、そんな訳ないだろう。一国の王女と対面出来る等、ただの民には到底不可能だ。
と、自分を説得していれば、セレンディアがようやく口を開いた。
「まさか、この国【フェストル】の将軍、ルーバ・ヴァルセリアのご子息なのですかっ!?」
「………は?」
予想外、更に聞いたことも無い名前に俺は唖然となる。
「フォックスはルーバ将軍のご子息なのですね!驚きましたっ」
いや、驚いてんのはこっちだから。誰だよルーバって…。
「誰なんだ?そのルーバって奴。俺はそんな名前の奴知らないぞ」
「あ、そうでしたの…。ごめんなさい、一人で興奮してしまって……」
先程まで驚いていた表情をしていれば、突然俯き、落ち込んでる様子のセレンディア。
感情が表に出やすい奴だな…。
「で、ルーバって誰?」
「我がフェストル王国の将軍です。戦争では必ず大活躍しているとお父様からよくお聞きになりましたわ。
なんでも、波撃[ルーパード]に属する闇属性の波術『波闇[ダームループ]』を使いこなす達人だとか…。
お父様と仲が良いのでよく城に来訪してくることも度々あります」
俺は親の記憶は一切無い。だとすれば、そのルーバという将軍がもしかすれば俺の父親なのかもしれない。
もしそうだとしても俺はとくに会いたいとは思わなかった。俺にはリアが居る。リア以外何もいらないから。
だが…、一つだけ疑問に思うことがあった。
何故、俺を【兵士飼育所】に入れたんだ?
母親は必死になって、俺が無理矢理連れて行かれるのを阻止しようとしていたのは記憶に残っているが、父親は何もせず、ただ俺を傍観しているだけだった。
まるで見物する観客のように。
あの夢に出て来る父親が、父親かどうかも分からないし、ルーバという将軍も俺の父親かどうかも確かめなければ分かる筈もない。
だが、何がどうあれ、俺は確かめたいことが一つあった。
俺は……、
俺はもうすでに、生まれた時から父親にとって、いらない存在だったのかを。