I.T.L

□第7戦【一人という虚しさ】
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――シュールントの村で調達した地図を開き、次の目的地を探す。


このまま東に10フェール向かった所に『トルド砂漠』があるらしい。

何フェールあるか分からない砂漠を越えた先はアザード帝国の領土『水の都 ハルゼシア』


アザード帝国はフェストルにとって最大の敵国。
フェストル王国の王女セレンディアがそんな国に行けば即座に殺されるだろう。


そんな心配を余所[よそ]に、セレンはアザード帝国へ行くのを楽しみにしているようだ。

さすがにこれ以上危険な目に犯す訳にはいかない為、覚悟を決めて俺はセレンに言った。



「自分の街へ帰れ」と。



それを聞いたセレンは、途端に今まで見たことのない形相で俺を睨みつけ、


「冗談じゃありませんっ!!!」と怒鳴った。


さらに怒鳴る。


「私なら大丈夫ですっ!
私のせいで皆さんが巻き込まれるなら、そうならないように……」


セレンは腰に付けている小さなバッグから調理用ナイフを取り出し、


「こうしますっ!!!」


フェストル王国の王族の証であるその輝く金色の髪を切った。


「え、ちょセレッ…」


暴走したセレンは躊躇[ちゅうちょ]することなく、次は服の腹の部分を引き千切った。



この場にいる者なら誰でも思っただろう。


「「「(やり過ぎ……)」」」


「こうすればバレません!」


「いや…、あの…、逆に盗賊と思われるんじゃ…」


セレンの服は見事にビリビリに破れ、まるで女盗賊のような格好に。

腹は露出し、白い肌が露になり目のやり場に困るのをコホンッ、と咳払いをして誤魔化した。


「それに砂漠越えするのにそんな格好じゃ日焼けするぞ」


「………そ、そうでした…」


ズーン…、という効果音が聞こえてきそうな程落ち込み、先程の暴走をセレンは後悔している。

(馬鹿だ……)


「とりあえず、……そうだなー…」


と、俺はまた地図を確認する。
すると、トルド砂漠の前に丁度街があることに気付いた。


「ここ、レーラ荒原を抜けた所にある『ペルタン』っていう街で一旦セレンの服を買おう。髪は…、もうどうしようもねェなぁ…」


「ごめんなさい…。私ったらつい興奮してしてしまって…っ。
逆に皆さんに迷惑をかけてしましました…っ、う…っ、うぅ…っ」


余程さっきの行動を後悔しているのか、セレンは両手で顔を覆い泣き出した。


「な、泣くことないだろ…」


突然泣き出すセレンに後ずさりする俺。


「でもぉ〜…っ」


「兄ちゃん泣かせたー」


「お兄ちゃんダメでしょー」


二人はまるで他人事のように俺達を置いて先へ進んで行く。


「おいコラッ、お前らも慰めてやってくれよ!」


「だって泣かせたの兄ちゃんだし、なぁ?」


「ねぇ、そうだよそうだよ」


「何意気投合してんだっ!」


もろ半泣き状態で二人に助けを求め、なんとかセレンを泣き止ませた。







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