I.T.L

□第5戦【蠢く黒い影】
1ページ/16ページ


――翌日の早朝。
俺達は再び、王都ゲンドールを発った時のように、早朝に街を発つことに。


「街長さん、二日も宿泊させてもらい、本当にありがとうございました」


セレンは丁寧にお辞儀をして、街長に笑みを浮かべた。
街長は少し頬を赤く染め、照れた表情のままニッコリと優しく微笑んだ。


「いいえとんでもない!また遊びに来て下さると私は嬉しいですよ」

「おじいさん、ご飯おいしかったよ!ありがとうっ」


リアも満面の笑顔で街長に礼を言った。余程あの豪華な食事が美味しかったようだ。


「孫が出来たようで、嬉しかったよリアちゃん。こちらこそありがとう」


そんなリアに対しても、街長は優しく微笑む。そしてまるで太陽のような笑顔を向けてくるリアの頭を優しく撫でていた。

どうか旅の道中、怪我などしないように。そんな願いを込めて街長はリアの頭を撫でる。


「色々迷惑かけて、悪かった……」


最後に俺が街長に詫びる。先日の出来事はいくら心優しい街長でも、俺のことを軽蔑するだろうと思った。
なので少しでもそう思ってしまっていた街長の気持ちに詫びるように、俺は頭を下げた。


「……強く生きなさい。そしてこの二人を、沢山の人を…、守ってあげるのですよ」


街長は俺を軽蔑する様子も無く、街長は頭を下げた俺に頭を上げるよう促した。
そうして街長の顔を見上げれば、街長は優しく微笑んでいた。


「…あぁ、約束する」


お互いぎゅっ、と握手をした。その強く握り締める手が、俺が街長に対し誓いを立てているようだった。

言われなくても、これからはリアもセレンも俺が守る。今となってはセレンも大事な仲間だ。


「それではお気をつけて。またこの街に寄った時には、私の自宅に遊びに来てくださいね」

「ええ、もちろんですわ。
……あ…、街長さんあの…、私お父様に何言わずまま城を出て来てしまったのですが、"私がこの街に来なかった"ということにしておいてもらえませんか…?」


セレンは遠慮しがちに街長に尋ねる。街長は手を顎に当て少し考え、
「何か理由があるのですね…、分かりました。もし王都ゲンドールの憲兵が尋ねて来ても黙っておきます」と言った。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ