ブック13

□愛の在る場所
1ページ/1ページ




ムウ・ラ・フラガとしての自分を取り戻した男と、彼の愛する勝利の女神は
離ればなれだった時間を埋めるかのように仲睦ましく寄り添い合っていた。

彼らの仲を知っているクルー達はその様子を微笑ましく見守る。


そんな時ふと、ラクスが呟いた。


「バルトフェルドさんはどう思っているのでしょうか?」




―ストライクフリーダムのコクピットの中で調整を行なっていたキラは、先日のラクスの言葉をなんとなく思い出した。

バルトフェルドとはラクスと共に2年間共に生活をしたことがる。

あの頃のバルトフェルドとマリューは互いを思いやり理解し合っているように思う。
二人の間に恋愛があったのかは分からないけど。


キラは調整の手を止めて、ラゴゥの中にいるバルトフェルドに通信回線を開いた。


「あの、ちょっと聞いて良いですか?」

《お、キラ。なんだいきなり》

モニターに隻眼の男が写る。
本人の顔を見て、尋ねづらいなとキラは少し悩んで、それから意を決した。


「バルトフェルドさんて、マリューさんのこと好きだったんですか?」

《………はあ?》

隻眼の男の目が大きく開かれる。

「ムウさんが帰って来て、えっと…、複雑じ
ゃないですか?」

キラの言葉にバルトフェルドはしきりに目を瞬かせる。
数秒の後、バルトフェルドはぷっと吹き出した。


《悪いがな、キラ。俺はアイシャ一筋だ》

「あー、そうなんですか。そうですよね」


《だか、マリューのことは好きだったぞ?》

「…えっ!?」

《なに驚いてるんだ。あんな良い女、好きにならないほうが失礼だろう》


モニターに写る彼は楽しそうに笑っている。


《俺はな、好きな女はたくさんいるんだよ。
だが、愛した女はアイシャしかいない》


キラは首を傾げた。


「“好き”と“愛してる”は違うんですか?」

《なんだキラ。今さらお前!》

バルトフェルドは大げさに肩をすくめ、呆れた様に息をつく。

《俺はな、好きな女には幸せになってもらいたい。
例えそれが他の男とでも良い》

そこで一旦言葉を切り、バルトフェルドはキラを真っ直ぐ見据えた。
モニター越しだとしても、隻眼の瞳は未だ鋭く、キラの背が無意識に伸びる。


《だが、愛する女は俺と幸せになってほしいんだよ》

「…!」

《こういう想いをお前は知ってると思うがな》



―浮かんだのは、優しい色を持つ女性だった。
かつては親友
の婚約者だった彼女は、当たり前のようにキラの隣にいてくれる。
幾度となく手を離してしまった人だけど、今は強くその手を繋いで離せない。

自分の隣で、一緒に幸せに笑ってくれる人―――ラクス。


「…はい、よく知ってます」



キラの顔に笑みが浮かぶ。
バルトフェルドも同様に笑った。


《だろう?だから俺のことは気にするな》


彼は軽く手を振って通信を切る。





何も写さないモニターを眺めながら、キラは愛する女性に逢いたいと強く願った。








  【 愛の在る場所 】











うちのバルトフェルドさんはロマンチストです。
戻る

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ