ブック13

□フォーゲットイヤー パーティー
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ザフトの隊長服を初めて纏ってから長い月日が経った。
未だに世界は混沌としていて、争いはなくならないけど、それでも、以前よりも確かに穏やかな時間が流れている。


美しい星々の大海を見上げながら、キラは静かな時間を過ごしていた。
熱くなった体に、冷たい風が心地よい。


しかし、そんな静かな時間は長くは続かなかった。

バターン!と乱暴に開かれた扉から騒がしい声がする。


「なーに黄昏てんだぁ、キラ!さっさと皆の所に戻ってこぉぉいっ」


 
顔を真っ赤にしたカガリが上機嫌でキラの腕を引っ張った。
そのせいでバランスを崩したキラは「わ、わ、わっ」と慌ててカガリに付いていく。


「もー、酔い冷ましにちょっと外出てただけじゃないか!
カガリだって、相当酔ってるでしょ?風に当たりなよー」

「馬鹿っ。せっかくやっと久しぶりに皆と会えたんだ!そんなことしてられるかっ」


少し振り向いたカガリがとてもとても嬉しそうで楽しそうで。

彼女に連れ戻された部屋では相変わらず仲間達が酒を片手に笑っていて、その光景を見ていると泣きたくなるくらいに幸せだと思った。




世界のためにバラバラになった仲間と、新たに手を繋いだ仲間たち。不思議な絆で結ばれた人達と会える時間はそうそうないから。
皆必要以上にはしゃいでいて。


その輪の中に何よりも大切な女の子もいた。
普段あまり飲まない酒を先ほどから何度も口に運び、子供のように無邪気に笑っている。

キラといる彼女はいつも穏やかに微笑んでいるから、あの笑顔は珍しい。
少しだけ、悔しくなった。

 
(僕にだって、あんな風に笑ってほしいな)


「ラークス」


自分の思考に苦笑しながら、キラは彼女の肩をたたいた。


「まあ、キラぁ」


カガリ同様に顔を赤らめたラクスは、甘ったるい声でキラを呼ぶ。滅多に聴けない声に胸が高鳴った。


「よお、キラ!飲んでるか〜」

ラクスの向かい側にムゥが座っている。その隣にはマリューがいた。


「ええ、まあ。
それより、相当飲んでるみたいですね、ラクス」


当然のようにラクスの隣に座ったキラの肩に、コツンと薄紅色の頭が当たる。











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