ブック13

□泣いて
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「つらいのに、なぜ笑うのですかっ…?」



泣いてほしい。
その心を見せてほしい。

笑われたら踏み込めない。
そんな風に笑われたら何も言えなくなってしまう。


キラはそれを解ってて、きっと笑うのだ。
安心して、心配しないで、信じて、止めないで…と。

そうされたこちらがどう思うのか、解ってて笑う。
酷い。ずるい。


「…ね、ラクス。僕は辛い気持ちより、嬉しいって気持ちのほうがずっと大きいんだよ。」

「……」

「君を守れる喜びが僕を笑わせてくれる。
なのに、泣く必要なんてないじゃない?」


肩に彼の髪が触れた。
さらさらの髪がくすぐったい。


「それに、もう泣かないって決めたんだ」


「なぜ…?」


「だって僕がずっと泣いてたら、ラクスが泣いてくれなくなっちゃうでしょ?」


「え…?」


再び目を見開いてラクスは振り返ろうとした。
しかし肩にキラの頭があるためにそれは出来ず、彼をただ見下ろす。


「ラクス、泣きたくても僕たちの前だと我慢するでしょ。悲しいくせに平気なフリばっかりだし。そのくせにこうやって一人で泣いて…。」


不意にキラが顔を上げた。
息がかかるほどに互いの顔が近付いてラクスは息を呑む。


「僕の前だけは、本当の姿を見せてほしいんだ」

「……!」


少し怒ったような瞳がラクスを射抜く。気のせいか、抱き締める力が強くなった。












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