ブック13
□離れていても
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“赤い糸ってご存知ですか?”
ポツリと、僕の一歩後ろの彼女が呟く。
明日にはプラントに発ってしまうラクスたってのお願いで、僕たちはオーブの浜辺を歩いていた。
「なんとなく、思っていたのです。再びがあったら、わたくしはキラの傍にはいられない、と」
もう一度戦ってしまえば、もう穏やかな日々には戻れない。
世界が、自分がそれを決して許さないだろう。
それは、僕も感じていたことだった。
だから、今度は闘い続けると決めた。
「運命の赤い糸が目に見えたら良いのに、と思います。
どんなり離ればなれになっても、ちゃんと貴方と繋がってるのが分かっていられたら…強くいられるのに」
揺れる空色の瞳が、僕の胸を締め付ける。
離れることを辛く思うのは彼女も一緒なのに、けれどもう決めたことだから、彼女はそれを途中で変えたりしない。
自分で自分を縛ってしまう人。
そんなラクスを愛しく思う。
僕はただ彼女を抱き締めた。
ラクスの柔らかさや暖かさを、きちんとこの身体に記憶させるように、隙間なく強く。
―離れていても、心は君の隣にいる―
心の中でそう繰り返した。
離れていても
(知ってる?
僕のほうが離れることを拒んでる。一分一秒でも、君の傍を離れていられない。)
。
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