ブック5

□いまはむかし
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「ルルーシュ!ナナリー!」


あどけなく高い声が、青空の下に木霊する。
その声の主、スザクは片手を高く上げて後ろからゆっくり歩いてくる少年と、その少年が押す車椅子に乗った少女に言った。


「うちの神社で一番でっかい桜なんだ!すっげーだろ!」






今は昔、もう8年前の夏の思い出。






「…ぅっわあー」


目の前に現れた巨大な木に、車椅子を押していた少年、ルルーシュは感嘆の声をあげた。


「本でどんなものか知っていたつもりだったけど、本物はずっとすごいなぁ」


太く、大地に根付く幹と、
それに支えられるように薄紅色の小さな花が咲いている。
風に吹かれるたびにサワサワ花が揺れ、散って行く花びら達がとても幻想的だった。


「お兄様、桜はどのような花なのですか?」


車椅子の少女、ナナリーは隣で惚けていたルルーシュの裾を引っ張る。
ハッとしたルルーシュは、少し悩んだあと、目の見えないナナリーに目線を合わせるように、彼女の前にしゃがんだ。









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