ブック5
□騎士と姫君
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「…だって、とても悲しそうに鳴いていたものですから、…つい。」
ユーフェミアは、首をすくませながら
すぐ目の前に仁王立ちをする少年を見上げる。
「だからって、何を考えているんですか?
あんなところから、貴女が枝に移れるわけないでしょう。」
「あ、いえ、でもわたくし、運動は昔から得意なん…」
「ユーフェミア様!」
晴れ渡った空に、
少年の喝が響き渡った。
危なっかしい行動の自覚が一切ない姫君は、ビクッと肩を震わせ、両目を強く閉じた。
「す、すみませんっ…」
慌てて紡いだ言葉だったが、確かな反省の色が見えて
少年は一つ、長い息をはいた。
「本当にすみません、スザク」
遠慮がちに顔を上げ、ユーフェミアはスザクを見る。
「あまり心配させないで下さい」
心底困った顔でスザクは告げた。
「貴女が窓から落ちた瞬間、僕がどれだけの思いをしたか…」
ユーフェミアはしゅん、と目を伏せる。
彼を困らせてしまった。
ユーフェミアはスザクの困った顔は、あまり好きではないから、そんな顔をしてほしくはないのに。
「…ごめんなさい、スザク。もう危ないことはしないわ。」
。