ブック5
□例えば、こんな寒い日に
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天一は、やむおえない事情で安倍邸で暮らすことになった彰子に、毎日のように一緒にいてくれている。
彼女のそばには必ず、
必ず恋人である朱雀がいる。天一と同じく晴明の式神の一人だ。
姿は見えないが、気配は感じるので、おそらくは天一のすぐ横に隠形しているのだろう。
天一は優しい笑顔を彰子に向けている。
「なぁに?天一」
「先ほどから、彰子姫の表情がころころ変わられまして、楽しいな、と…」
「…えっ?」
彰子は驚いて天一を見る。
天一は変わらず笑っていて、まるで鈴の音のようだ。
「始めは何か心配をされてる様なお顔をして、次は面白そうに笑っておいででした。
後に苦く笑って、最後にはしっかりとした表情になっていましたよ」
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