ブック5
□例えば、こんな寒い日に
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毎晩、もっくん、時折六合と夜警に出る昌浩は必ずどこか衣を破いてしまう。
彼の母である露樹は昌浩が夜中に出掛けている事などを知らないため、
彼はその衣を見つからない様に隠している。
隠している。
隠しているのだが。
「…とても分かりやすいのよね」
昌浩は見つからないと思う場所に隠してるつもりだろうが、実はそんな事はない。
そこは、とても分かりやすく、彰子はすぐに発見してしまうのだ。
彰子はそれを発見する度に苦笑して
明日にでも破れを直そうと、決める。
《クスクス…》
ふと、誰もいないはずの室内から透き通った声が響いた。
「どうしたの?天一」
彰子は隣を視る。
何もなかったはずのそこから、美しいという言葉が似合う女性が現れた。
安倍晴明の式神の一人、天一である。
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