ブック2
□それは、哀しい物語。
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僕の瞳の色を綺麗だと言ったのは、彼女が初めてだった。
闇に慣れて、僕の瞳は汚れきっていたのに
彼女は優しく微笑んで言ったんだ。
「貴方の瞳の色、好きですわ。」
嘘だ。
嘘をつくな。
僕は彼女の言葉を信じなかった。
「…僕に近付かないで。」
そうやって、何度も何度も彼女を拒んだ。
でも、彼女は変わらずに、僕に微笑みかけた。
僕には眩しすぎる、彼女の微笑み。いつの間にか、僕はその微笑みを受け入れていた。
「キラはいつも悲しそうなお顔ばかりで、笑ったお顔を見たことがありませんわ。」
ある日、彼女が呟いた。僕は、聞こえない振りをした。
…笑い方なんて、分からない。人は、どうやって笑うんだろうか。
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