ブック2

□それは、哀しい物語。
3ページ/7ページ




僕の瞳の色を綺麗だと言ったのは、彼女が初めてだった。




闇に慣れて、僕の瞳は汚れきっていたのに
彼女は優しく微笑んで言ったんだ。



「貴方の瞳の色、好きですわ。」







嘘だ。
嘘をつくな。
僕は彼女の言葉を信じなかった。



「…僕に近付かないで。」




そうやって、何度も何度も彼女を拒んだ。

でも、彼女は変わらずに、僕に微笑みかけた。





僕には眩しすぎる、彼女の微笑み。いつの間にか、僕はその微笑みを受け入れていた。




「キラはいつも悲しそうなお顔ばかりで、笑ったお顔を見たことがありませんわ。」



ある日、彼女が呟いた。僕は、聞こえない振りをした。




…笑い方なんて、分からない。人は、どうやって笑うんだろうか。






次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ