ブック5

□自覚のない騎士
2ページ/2ページ




「…ルルー……、ナリー…」



今にも消えてしまいそうなか細い声でユーフェミアは呟いた。




(ないてる…)


ジノはまじまじとユーフェミアの顔を覗き込み、ゆっくりとその横に座った。


ユーフェミアが寝ているなら帰ろうと思った、けど。




(寝ながらないてるなんて、初めてみた)



じっ、と広がる空を見る。雲一つない、青空。




(だってユーフェミアはずっと笑ってて、拗ねたり…
ないても、わんわんうるさいのに)





こんな風に静かに泣く彼女を初めて見る。





こつん。
と、ジノの手に柔らかなモノが当たる。

顔を降ろして見ると、それはユーフェミアの腕だった。





(うで…、細い…)




ジノはユーフェミアが起きないようにそっと彼女の腕に手を伸ばす。




(僕と全然違う)







―まつげも、僕よりずっと長い







(…そっか)







―これが、女の子なんだ






(女の子って、弱いんだ)






ユーフェミアの腕から手を離し、ジノは自分の手をまじまじと見つめた。

握っては広げる動作を繰り返す。
(僕は男の子で、女の子よりも強いから)











―だから 僕が ユーフェミアを









(守ってあげるんだ)








ジノの決意、それはまるで自覚のない、小さな騎士。












end.
戻る
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ