ブック5
□反逆の仕方を
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初めて出逢った時に名乗った愛称。
親しい間柄の者しか知らない、呼び方。
かたくなにその愛称を呼ぼうとしない彼が、呼んだ。
「スザク…」
「ちょっと、呆れた」
苦笑気味に、年相応のしゃべり方をするスザク。
ユーフェミアは張った目を申し訳なさそうにまた伏せる。
「すみませ」
「でも」
また謝ろうとするユーフェミアを遮り、スザクが笑う。
「自分の意思で貴女の騎士になった今、貴女がどんな理由で僕を騎士に選んだかは、何でも良いよ」
「え?」
向かいのソファーに座るスザクを、ユーフェミアはまじまじと見る。
戸惑いも喜びも呆れも見られなかった瞳は、今はただ穏やかな色を映している。
「…なんでも、良いの?」
「うん、なんでも良い」
―わたくしを好きになりなさい!
あの時、あの言葉をもらった瞬間から、何もかも、どうでも良い。
「僕はユフィを守る。
何があっても、何を犠牲にしても、ユフィがどう思ってもね」
「…犠牲って」
微笑むスザクに、ユフィは眉を下げる。
彼の言葉は嬉しいのだけれど、でも、なんだか物騒だ。
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