いつもこっちが嫉妬したり、ヤキモチをやいたりしてなんだか悔しいから。
だから、ちょっとくらい意地悪したって構わないと思うんだよね。






休日の真っ昼間の喫茶店の窓側の席に、若い男女が向かい合って座っていた。



「あ、あの子、可愛い」


無邪気な笑顔で少年は窓の外を眺める。
彼は道行く女性達を見ては、いちいち感想を述べていた。



「あらあら、本当に可愛らしい方ですわね」


ほほほ、と穏やかな笑みを浮かべる少女だが、彼女の笑みはいささかひきつってしまっている。



「あっちの子も可愛いなぁ」


ピクリ。
少女の頬が動く。



「うわ、綺麗な人。年上かな〜」


ピクピク。
頬が痙攣しているかの様に動いている。



「わ、あの人足長い。モデルみたいだ」


ピクピクピクピク。
だんだんと、少女が張り付けた笑顔が壊れていく。


店の奥でこっそりと二人の様子を盗み見ている店主は、いつ喧嘩が始まってしまうのか、ハラハラしながら平静を装っていた。



「あ、あの人可愛いなぁ。」


「………っキラ!」


ほけっと笑いながら言う少年に、ついに少女が声をあげる。
店主は思わず身構えてしま
った。


少女はワナワナと肩を震わせて、少年を睨みつける。



「…っいい加減にし」
「でも僕が好きなのはラクスだけだけどね」







   ちゅっ







「!!」


二人の様子を見ていた店主が、顎が外れてしまうのではないかと思うくらいに口を開けた。



一方の少女は、顔を真っ赤に染めて固まっている。
少年は満足そうに微笑んで、食べかけのケーキを口に運んだ。






「うん、美味しい!」






end.
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