嘘、だいじょうぶ*











僕が行かないでと言えば、彼女はきっと困る。
彼女は僕を愛しているから。



“まず決める、そしてやり通す”


それが彼女の信念。
彼女は悩みに悩んだ末、宇宙へ行くことを決めた。
でもきっと、愛する僕が「行かないで」と言えば、彼女は困る。

自分の信念と、僕への愛の間で揺れ動くんだ。




だから、僕は絶対に「行かないで」とは言わないんだ。

どんなに彼女が好きでも、愛していても、側にいてほしくても。
彼女が決めたことの邪魔はしたくない。


だから、僕はわざと笑う。
彼女が「ごめんなさい」と謝ってきても「何が?」と笑って答えた。



君がいなくても平気。
彼等のほうが君を必要としてる。
僕は別に、何も思ってない。


必死に自分の心に嘘をついて、偽って、彼女の足枷にならないように、意地を張った。






だけど、だけどやっぱり無理だよ。


彼女が隣にいないなんて有り得ない。






好き、大好き。
君がいなければ生きてはいけない。






「……いって、らっしゃい」


「はい」



掻き抱いたぬくも
りが、胸を刺す。
ああ、もうこのぬくもりは当たり前じゃなくなる。





「行ってらっしゃい…ラクス」






僕のもとにちゃんと帰ってくるんだよ。











*
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