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□真白、
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雪が降り積もったまま、誰も踏み入れていない広い田園を見て思った。
……何となく。
…………美味しそう、と。
真っ白で、ふっくらで、ふわふわの……甘ーいお菓子みたいだったから。
「食べたいなぁ」
こんな小さな呟きを聞き逃さなかった彼は、驚き振り返った。
「……食べたい、って?」
わたしは苦笑して首を振った。
「違うんです、あの…、雪が、美味しそうって…」
「………雪、か」
何故か安心したように頷いた彼は、「そうだね」と笑った。
「君がそんな事言うわけないか、私はかなり汚れてしまっているようだ…」
「………けがれてる?」
何だか独り言みたいなその言葉から抜粋した一部をオウム返しに尋ねた。すると今度は彼が苦笑する。
「……いや。つまり…、この雪景色は君そのものだなって」
「……わたし?」
「…あぁ。土足で踏み込んではいけないような、まっさらで無垢な所がね」
「…………はぁ」
……難しい事を言う人だな。
わたしは怪しいタイミングで相槌を打って、彼が続ける言葉に耳を傾けた。
「……あぁ、そうだ。君の言う『美味しそう』というのも合ってるかな?」
「……………えっ?」
意味が解らなくて、また訊き返す。だけど彼は珍しく意地悪に微笑んで、
「君がもう少し大人になるまで待つよ」
…と。
額に触れた唇は肌に甘さを残して放された。
真白、(You're my sweet!)
終
◇◆
*桂さんとの短編。
『sweet』は“甘い菓子”の他に“恋人”という意味合いを込めてます。
相互linkしてくださったmika様へ、勝手に捧げます。
瀧澤より愛を込めて…!
by瀧澤