06/17の日記

01:52
リハビリ
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右手には傘、左手には、





「ほら、ちゃんと合羽、頭まで被ってね」
「うん!」
「よし、しゅっぱーつ!」
「ぱーつ!」




最愛の彼女と、
そんな彼女と俺をつなぐ小さな手。
























*つなぐ











6月17日、雨。
もう何度目か、数えることもしなくなった。
それほどの月日が流れたんだってことは、俺の左手の中にある小さな掌が証明してる。




確か晴れの日もあったはずだけだど、この日を思い返せば雨ばかりが浮かぶ。





「楽しみにしてたお出掛けなのに、雨になっちゃったね」
「うーん、でもね?ぼく、雨の日好きだよ?」
「どうして?」
「えっとね、カエルと遊べるしカタツムリと遊べるし、カッパも着れるし!」




カッパってたのしいんだよ?
なんて、何故か俺を見上げて言うこいつは、最近新調した合羽が相当嬉しいらしい。




「あ!じいちゃんだ!」
「・・・」
「とうちゃん?」
「・・ああ、行ってこい」
「うん!」




『合羽』なんて漢字の通り、手を離せば羽のようにふわふわと飛んでいってしまいそうで。
そしてそれを追いかけて彼女までいなくなってしまいそうで。
手を離すのが怖くなる。




なんとか平静を装って手を離して、駆けていく小さな背中を見送っていると、代わりに触れる温もりは彼女のもの。
 



「・・・見守るしかできないって、辛いな」




傷1つないように護るために、手を離さないのは簡単なことだ。
でも、それは俺のエゴ。
目をキラキラさせて羽ばたいていこうとするアイツは、そんなこと望んじゃいない。




昔、散々心配をかけながらも、後ろから隣から、ずっと俺を見守ってくれていた彼女の気持ちを今になって理解した。
それを今、『ごめん』の一言で終わらせてしまうのは違う気がして、これ以上言葉が続かなかった。




「これからは一緒に、だね」




そんな俺の気持ちを汲み取って、そう言ってくれる彼女には本当に頭があがらない。




「とうちゃん、かあちゃん!」




伸ばされる小さな掌を、ぎゅっと握る。




「あのね?」
「ん?」
「雨の日はとうちゃんがぎゅーって手をつないでくれるから、やっぱり好き!」
「・・・、そうか」







6月17日、雨。
それでも温かい手のひらと、隣にいる暖かい人と、ほんの少し熱い目頭。





かけがえのないものと同時に手にした、失う怖さ。






ああ、なんだかすげぇ心ん中が散らかってる。





   
もともと上手い言葉なんか出せる力は持ち合わせてねぇけどさ?






ありったけの力で、護るから。






小さな手をさらにぎゅっと握る。





「とうちゃんにぎゅー攻撃された!」
「よーし、仕返ししちゃえ!」
「うん!ぎゅーーー!!」






そんな声を聞きながら、誓った。








ある、6月17日のこと。










*2018.06.17

できることは、これくらいしかないけど。



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