*過去拍手話

□雨上がりに咲く僕のお花
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雨が降った。


寝起きの頭でぼんやりと外を眺める。
小さな雫がぽつぽつぽつぽつ。


今日はどうしようか。
井上に電話しないとな。
わかってるのに起きる気にならない。
親父、今なら許してやるから飛び込んでこい。


「お兄ちゃーん、織姫ちゃんから電話だよー!」





あ、先越された。






*雨上がりに咲く
ぼくのお花






日曜日の、朝。
天気、雨。
目的地は井上の家。
朝だからなのか雨だからなのか、歩くのは俺ただ一人。


いつもはにやけそうになるのを抑えながら歩くこの道が、今はどこか窮屈で。
それはこの道に限ったことではないけど。


雨に良い思い出はない。
嫌いではなくなったけど、まだまだ苦手だ。


本当なら、今日は動物園に行く予定だった。
傘もほとんどいらないこれくらいの雨なら、行けないこともなかったけど。
やっぱり雨の中出掛ける気にはなれなくて。
でも、雨が苦手だから行けないなんて、情けなくて言えなくて。
受話器の向こう、「今日はどうしますか?」の井上の問い掛けに、言葉が詰まった。


そんな俺に気付いたのか、受話器の向こうから聞こえてきたのは、「また今度にしましょう!」っていう、井上の元気な声。


「あいつ、すげぇ楽しみにしてたよな・・・」


見て回る順番を決めてみたり、
お菓子は300円までだと言ってみたり。
小学生の遠足かと思うぐらい、はしゃぎまくってたな・・・。


そんな井上の姿を思い出したら、中止にさせてしまったことが申し訳なくなってきた。


「何してんだよ、俺・・・」


たかが雨。


でも、されど雨・・・。




「〜♪」


誰だ??
どこからか、歌が聞こえてくる気がする・・っておい。


「庭の〜シャベルが、い〜ちに〜ち濡れて、あ〜めがあがってぇ、く〜しゃみ〜を1つ〜♪」


どんな歌だよ。
シャベルがくしゃみなんかするかっての。


「何してんだあいつ・・・」


歌の出処は、小さな公園。
遊具も濡れてて、遊んでる子どもは1人もいない。
その代わりに、傘も差さずに歌ってる高校生が1人・・・。


「洗濯〜物が、い〜ちに〜ち濡れて〜♪っと。ん〜、あんまり上手く撮れないなぁ」


井上の手には携帯、背中にはリュックサック。
周りには何故かバケツと、あれはシャベルか?
目の前の鉄棒には何故かタオルらしきものが引っ掛かっている。
・・・何してんだいったい??


「ひ〜かり〜がさして、見〜上げてみれば〜♪あ!カエルだ!ケローン!!」


歌ってたかと思いきや、目の前を横切ったカエルくんを追いかけはじめる・・・。
どこの小学生だよ。


「もしかして・・、このまま追い掛けたらアリスみたいに違う世界に行けるかなぁ」


いや、行けないだろ。
ウサギとカエルって、違いすぎるだろ。


「よ〜し!それでは、カエルくん捕獲作戦開始します!」


捕まえるのかよ!!


「待って待って〜!」


少し黙って様子を見るつもりが、心の中で思わずツッコミ・・。
結局何のために公園に来てるのかは謎だけど、
まぁ、井上らしいというかなんというか・・・。
つーか、これはいつ止めに入ればいいんだ?
それよりこのまま黙って見守るべきなのか??


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