*過去拍手話

□ひらひら、ひらり
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ひらひら、ふわふわ。




追いかける、小さな桃色。
両手を広げてみるけれど、なかなか掴めない。
近づいたと思ったら、遠ざかる。



なんだか、
大好きなあの人の背中を追いかける時と、ちょっと似てる。







*ひらひら、ひらり






「さっみいなぁ〜」


放課後、
俺の両手には箒とゴミ袋。
まぁ、いわゆる掃除当番ってやつだな。
外掃除は、掃除をサボれる絶好の場所だけれど、
まだまだ風か寒い春先には勘弁していただきたい。
だいたい、俺はこんなことしてる場合じゃないっつうの。
まぁ、普段から真面目にやってるかと言ったら話は別だけどな。


がさりと、左手のゴミ袋が音をたてる。


「一護、ゴミ回収よろしくね」


そう言ってさりげなく水色に渡された。
一通りゴミは回収し終わって、残るは井上のところだけなんだけども・・・。
さっきから、足がちっとも進まない。
同じところをぐるぐるぐるぐる。
水色には何も言っちゃいないけど多分、気付かれてるんだ。



最近気付いた、井上への気持ち。
なにがきっかけだったのは、わからないけど、思ったんだ。




俺、井上のこと好きなんだって。




自分以外の男がアイツの隣にいるとムカつくし、
かと言って自分が近づく勇気もなくて。


「・・・どうすりゃいいんだっつの」


手っ取り早いのは水色に相談しちまうことなんだろうけど。
何せいまだかつて感じたことのないこの気持ちを上手く言葉に出来ない。


「はぁ・・・、わっかんねぇ」


頭をガリガリと掻き毟ったところで答えなんて出ない。
とりあえずわかるのは、井上のところにゴミを回収しにしかなきやってことだけ。


「・・・行くか」


悩んでても仕方ねぇし、重い足をなんとか進ませる。
鉛のように重たい足取りとは反対に、心臓はもう弾む弾む。
ゴミ回収に行くだけでこれだなんて、これから大丈夫か俺・・。


「・・何やってんだアイツ」


なんとか辿り着いた井上の掃除場所。
井上のことだから真面目に掃除してんだろうなんて思ってたのに、何故か1人でぴょんぴょん飛び跳ねてる井上。
何やってんだ?






「くろっ、さきっ、くんっ、と!両、思いっ、にっ!」


お昼休みに聞いた、おまじない。
桜の花びらが地面に落ちる前にキャッチすると、願い事が叶うんだって。
たつきちゃんはたかがおまじないだって言ってたけれど、
こんなに目の前で桜の花びらがひらひらしてたら、恋する乙女としては黙っているワケにはいかないのです!!


でもこれが中々難しい。
小さな花びらはちっともじっとしてなくて、
つかまえたと思ったらするりと逃げ出す。


「強敵ですな」


なんだか、黒崎くんの背中を追いかける時みたい。
確か桜の花言葉は、心の美しさ。
色はちょっと違うけど、桜の花びらって、黒崎くんに似てる気がする。


「よし!!」


桜の花びらをつかまえれば、
願い事も叶うし、
花びら黒崎くんもつかまえられるし、一石二鳥!


「勝負ですな、黒崎くん!」


井上織姫、受けて立ちます!!


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