*過去拍手話A

□HOME SWEET HOME〜first road〜
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カレンダーの日付は、6月第3週の日曜日。






とてつもないくらい、心が穏やかな、日曜日。













*HOME SWEET HOME〜first road〜













『一護くん、お弁当忘れてないかな?』






明日は父の日だから、一護くんに内緒でパーティーの準備するからね!って、
本人を目の前にして堂々と言われて1日外出してくれと頼まれた。






せっかくの日曜日の非番日に、家族と離れて1人寂しく過ごすのはどうなんだと思ったけど。
生まれたばかりの次男を抱いてにこにこ笑う嫁さんと、
その隣で小さな両手を握り拳で何故かやたら張り切っている長男を前にしたら、そんなこと言えるはずがなく。






ましてや、パーティーの準備の手伝いと、生まれたばかりの次男を見に尸魂界からルキアと乱菊さんも来るんだって言われれば、






丁度タイミング良く掛かってきた、いつもなら軽く無視する親父からの病院を手伝えって電話に2つ返事をしたことは言うまでもない・・・。






っていうのが、昨日までの話。






『おーい、一護くん?』
「ああ、悪ぃ、弁当だっけ?」






結局、1日実家の手伝いをする羽目になった俺に織姫は弁当を作ってくれて・・・、いらねぇっつったのにヒゲの分まで。
家を出るとき鞄に入れたと思ったけど、どうやら忘れてきたらしい。






「悪ぃな、せっかく作ってくれたのに。そいつは帰ってから食うよ」
『ううん、それは大丈夫なんだけど』
「昼ならこっちでなんとでもなるから」
『あのね?それで・・・・』
「・・・・・?」














「親父」
「おう、一護。そろそろ昼にするか」
「悪ぃ、弁当忘れた」
「なぁぁにぃぃぃ!!?貴様、ワシの織姫ちゃんの愛妻弁当を忘れただとぉぉぉ!!」
「誰がお前のだ!つか、問題はそこじゃねぇんだよ!」
「はぁ?」
「一路が・・・」












『一路がね?一護くんにお弁当を届けるんだ!って、張り切ってるんだけど、行かせてもいいかな?』
「え?一路が?」












「なにっ!?一路が!?」
「まぁ、ルキアとか乱菊さんがこっそり後つけてくれるらしいから大丈夫だろうけど。とりあえず俺も様子見に行くから親父は急患来たときのために・・・」
「こうしちゃおれん!!」
「って、聞けよ最後までっ!!」
「一護よ!ワシは某テレビ番組にも負けない一路の可愛いはじめてのおつかい姿を収めてくるから、お前は急患のためにここにいなさい!」
「ばっちりタイトル言っちゃってんじゃねぇかよ・・・って、おいこらヒゲだるま!!」
「ド〜レミファ〜ソラシド〜♪」












「・・・・・・・」






時計の秒針の音がやたらと耳につく・・・。
時間の流れが、いつもより遅く感じる・・・。






一向が生まれたことと、俺の職場の関係で、実家の近くに引っ越したから自宅から家までは商店街を抜けたらすぐの距離にある。
その商店街ってのは俺も織姫も小さい頃から馴染みのあるところで、もちろん一路も何度も足を運んだことがあって知ってる人ばっかりではある・・。




一路も一向が生まれてからは「兄」である自分の立場を理解して、自分のことを名前呼びしてたのが「ぼく」に変わったり、しっかりしてきたけど・・・。




でも、それでも心配なことには変わりはねぇ。






「ああ、もう!」






もともと、待ってるだけなのは無理な性格。
それに、父親の俺が行かなくてどうするよっ。
親バカ上等、職務放棄・・・はちょっと罪悪感もあるが、長い付き合いの近所の皆様、大目に見てください。






ご用があれば、設備も医者も遥かに格上の空座総合病院へどうぞ。






そうして扉に鍵をかけて、俺は息子の元へと走り出す。


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