†【近藤×土方】
□キミの欲しいもの
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もうじき、土方の誕生日だ。
自室の卓上カレンダーを見つめ、近藤は難しい顔で顎に手をやり、『うーん…』と唸った。
『プレゼント、何をやればいいかなぁ…』
毎年のことながら、これ以上の難問がないんではないかと思えるほど頭を悩ませられる。
元々物欲というものがあまりない土方にとって服だとか、いわゆる定番といえるプレゼントはあまり喜ばれないことは、これまでの経験で十分知っている。
土方にとって、それらはただの消耗品でしかないのだ。
去年は出来るだけ実用性重視で、デザインの凝った高価なライターを贈ってやった。
土方は『んな高いもんなんていいのに。百円ライターで十分だよ』と言いつつも近藤からのプレゼントということで、随分とご機嫌だった。
だが、その後ライターは大事にされ過ぎて、しまいこまれているらしく、あまり使ってるのを見たことがない。
“ライター”というより、“近藤からのプレゼント”ということの方に、喜びの比重が大きかったらしい。
『使われなきゃ意味ねぇしなぁ…んじゃ、物より別のもんがいいのか?』
かといって食べ物といっても、土方が喜ぶものはマヨ丼しかない。
そんなのいつだって食べてるし、近藤としては身体に悪いそんなものをプレゼントする気にはならない。
女みたいに、お洒落な高級レストランで食事をして、花束を…という訳にもいかない。
自分達の立場を考え、人の目を人一倍気にする土方にそんなことをすれば、余計な怒りを招くだけだ。
『絶対しばらく口も聞いてくれなくなるよな。最悪、エッチまでお預け食らいそうだよ』
考えただけで恐ろしくて(特に後者)、近藤はぶんぶんと首を振った。
『あ〜っ、どうしようっ!』
『何がどうしよう、なんだ?』
ふいに割り込んだ声に、悶絶していた近藤がハッとして振り向くと、書類を手に持った土方が、訝しげに立っていた。
『ト、トシ』
『悪い、勝手に入った。なんかさっきから、呻き声やら唸り声やら聞こえてたけど、どうしたんだ?』
『あー…いや、別に…なんでも…ないんだけど』
誤魔化すように苦笑いする近藤に土方はますます眉をひそめ、首を捻った。
『ふぅん、ならいいけど。これ、次のシフトと来週の式典の護衛の編成、目通しておいてくれよ』
『お、おお』
書類を受け取りながら、土方をじっと見る。
(この際、直接聞いちまおうかな…)
プレゼントはどうせならサプライズでしたいとは思ってはいたが、土方に関してはもう直接本人に何が欲しいか聞くのが手っ取り早いかもしれない。