MYSTERYS 〜Chaos Chronicle〜

□混沌の現
6ページ/39ページ



 玄関を開けると、9人の男女が待っていた。既にハイエースの隣に日産のエルグランドとキャラバンが駐車されており、必要な荷物も既に降ろしていた。

「ようこそいらっしゃいました。御予約頂いたBSGジャパンの高田様ですね。私は犬山康介です。オーナーの犬山からお伝えしているかと存じますが、オーナーの代理をしています。よろしくお願いいたします。こちらは手伝いに来ている迷探貞です」
「あっ、迷です。ようこそいらっしゃいました」

 先程までの年下然としていた言動とはうってかわり、如何にもオーナー代理を担う流れる様な挨拶と自己紹介をする異なる康介に、探貞は一瞬呆気に取られるが、慌てて挨拶をして取り繕う。
 康介は探貞よりも年下ながら、侮れない役者ぶりであった。
 その康介は挨拶もそこそこに、高田という男性の後ろで携帯電話を操作する女性に挨拶をする。

「鈴木栄子様ですね。テレビで存じあげています。いやはや、お美しい!」

 あからさまなおべっかだが、その目は輝いているので、本当に康介はファンなのかもしれない。
 鈴木栄子は最近テレビのバラエティ番組や歌手でも活躍し始めている巨乳とぶりっ子キャラを売りにしているグラビアアイドルだ。探貞はあまり趣味ではないが、かなりの人気らしい。

「あらぁ、どうもありがとう! でもぉー、そろそろ部屋に行きたーい。荷物が一杯で重たいんですぅ!」

 栄子はすぐさま携帯から顔を康介に向けるなり、満面の笑顔で先程まで片腕にかけていた旅行バッグを両手に持ち、如何にも重い荷物アピールをしながら、康介に渡した。

「そうですね! お客様、重い荷物は玄関に置いて頂き、二階のお部屋にご案内を先にさせていただきます。荷物は後程我々でお持ちさせていただきます」

 康介は早くもオーナー代理の仮面が剥がれつつあるが、百点満点のエスコートで栄子を案内する。

「迷さんも、麻倉さんのお荷物を」
「麻倉?」

 康介がすれ違い様に探貞に耳打ちする。探貞が小声で聞き返すと、康介は目配せした。
 視線の先には、栄子と同じく巨乳を売りにしているグラビアアイドルの麻倉優子が同じく荷物を肩に抱えていた。探貞も栄子と同じように顔と名前程度は認知していた。栄子とは対照的に、棒付きのキャンディをくわえながら、番組の台本を澄ました表情で読んでいる。栄子の荷物よりも大きいが、運動部の学生の様に重さを感じない様子で肩にかけている。
 ちなみに、栄子の荷物は旅行バッグの他にキャスター付きのスーツケースが玄関に置かれているが、彼女の荷物は肩にかけた大きな旅行バッグだけのようだ。

「麻倉様、お荷物をお持ちいたします」

 探貞が麻倉に声をかけると、彼女は台本から一瞬、探貞に視線を向けるが、すぐに台本へ視線を戻した。

「あぁ、大丈夫よ。私の荷物は着替えばっかりだし、自分で運べるから。それよりも椎名さんの方を持ってあげて。撮影用の私達の服まで持ってるから」

 探貞の持つアイドルのイメージからすると取っつきにくい態度で麻倉は言い、椎名と言われた女性を一瞥した。
 探貞がその女性から荷物を受けとると、丁寧に彼女は探貞に挨拶した。

「鈴木と麻倉のマネージャーをしています、椎名愛子と申します」

 二人のアイドルとは年齢が違う為、全く異なるものの、彼女も十二分に美人だ。もしかしたら、元はアイドルや女優だったのかもしれないと考えると、彼女の顔に覚えがあることに探貞は気がついた。

「椎名まなさん?」
「あら、よくご存知だこと。まぁ苗字は芸名も同じだから気付く人も多いけど、あなたの年齢では珍しいわね。まぁ昔のことよ」

 売る覚えの記憶だったが、彼女の声を聞いて記憶が蘇ってきた。探貞が小学生の頃、観ていたヒーロー番組にも出演していたアイドルだ。原因は忘れたが、何らかの報道後にその番組からも降板し、姿を消した。
 探貞はとりあえず、それ以上話題に触れることは避け、椎名から荷物を預かった。
 そして、探貞と康介は、一同を二階へ案内した。

「お部屋の作りは皆同じで、各部屋一人です。鍵は開けておいているので、好きなお部屋に」

 そして、各々部屋に入って行った。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ