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【僕の黒歴史―策略―】

「暴力って自分も痛いんだな」
今し方振るった自身の拳を、及川は見ていた。
それは酷く他人事の様に冷たく、放課後の教室には似つかわしくない姿だった。
「っぅ……、」
殴られた相手は先日啓太に無理矢理迫った不良、保田だ。
保田は最初は食って掛かっていたが、及川は空手の有段者。力の差は歴然であった。

「お前らは好きでやってんだろ?だからさぞかし楽しいもんだと思ったのに」
及川が保田の顔を覗き込む。
「最低な野郎なら楽しいと感じるワケ?」
保田は何も言わない。その姿に及川が溜め息をつき、保田の腹部を殴打した。
「!ーーー……」
息と声にならない声が保田から漏れる。腹部を押さえ、そのままずるずると床に膝がつく。
「最低だとロクに口も聞けねェみたいだな」
うつむいていた保田の顔を無理矢理上に上げる。整髪料が手に付く不快感も、今の及川には気にするものではない。
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