□A
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「よう、調子どうだ?」
からがら部屋に戻ると、いつ来たのか先客がいた。声から察するに幼馴染みの野郎だ。こんな時に来るとは。

隣に住んでる及川とは、小さい頃から歴然とした『差』があった。
何やらしても平均以上。運動勉強人間関係、何をとってもトップに立つし、家は金持ちときた。顔も良いし、身長も申し分ない。出会った頃から、神はコイツに何もかも与え過ぎだと思ってた。
その『差』は、成長するにつれどんどん広がった。
そんなコイツに僕が勝てるものは、根暗でパソコンと二次元が友達だと言うくらい。うん、勝ったとは言えないのはわかってる。
「…なんだよ、笑いに来たのか」
自嘲ぎみに口が歪む。熱があっても性格最悪だな、とは思うが治す気は無い。
「お前が熱出すなんて珍しいな。小学生ん時なんてワザと雨ん中傘差さずに帰ったのに、超元気だったじゃん」
及川の話す昔話は、大部分が僕の黒歴史だ。
その時だって『天に棲む神よ、オレに力を!』とかと騒ぎながら、雷が鳴ったら水溜まりにスライディングしたような気がする。思い出したくない。
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